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季節の食にまつわることをお届けします 旬の食レポート

2017 Spring

身近な食のストーリー

里地里山の生きものが育む佐渡の米
朱鷺ときと暮らす郷」

新潟県の北方に浮かぶ佐渡島には、国の特別天然記念物「トキ」と共生し、
昔ながらの自然環境の中で育てたお米があります。
一時は絶滅したトキの繁殖と共に生まれたおいしいお米。その物語を追いました。

田植えを終えた田んぼの畔(あぜ)では、餌をついばむトキに出会えることも。
田植えを終えた田んぼの畔(あぜ)では、餌をついばむトキに出会えることも。

世界が注目する
トキと共生する佐渡の里山へ。

 新潟県の佐渡島は、日本では北方領土を除くと沖縄本島に次ぐ大きな島。鬼太鼓や能舞台といった伝統芸能が数多く残る島としても有名です。その佐渡島では今、特別天然記念物のトキが餌をついばむ田んぼで育ったお米が注目されています。その特別な栽培方法は世界的に評価されているとか。

 学名は「ニッポニアニッポン」。昔は日本各地に生息していたトキ。「朱鷺色」という言葉があるように、ピンクがかった翼、赤い顔、黒いくちばしが特徴の、日本を象徴する鳥です。昭和に入り、効率性を求めた農業の近代化や、乱獲により、一時は絶滅した日本のトキの、人工繁殖・野生化といった歩みと共に誕生したお米。その話に私たちも心が躍ります。

 さっそく佐渡島へ。時は晩秋。そこには、稲刈りの後も水をたたえて輝く田んぼがありました。春には虫や魚や鳥たちの命が芽生え、夏には緑の稲穂が風にそよぐ場所。まさにトキと共生する田んぼです。

「朱鷺と暮らす郷」の
仕掛け人が語る!
手間暇を惜しまない田んぼ作りが
生きものを育み、おいしい米を作るのです。

始まりはトキの餌場作り。

 新潟県の佐渡島は、日本で唯一、特別天然記念物のトキが暮らす島です。1981年からの人工飼育が成功せず、2003年に絶滅した日本のトキ。1999年に中国から贈呈されたトキの人工繁殖は、国を挙げての保護飼育の末に成功。今から8年前に佐渡の里山へ放鳥されました。それと並行して、地元ではトキの餌となるドジョウやカエルなど、さまざまな生きものが生息する昔ながらの自然環境作りに励んできました。そして、その取り組みに注目したのが、米農家の方々と共に地域を取りまとめる佐渡市役所でした。

「私たちが目指したのは、トキと共に暮らせる環境作り。その第一歩が、さまざまな生きものが棲みつく田んぼを広げることでした」と係長の西牧孝行さんは語ります。もともとトキという鳥は、目ですばやく餌を探すのが下手な鳥です。しかもツルやサギに比べて足が短いので深い水辺に立つのも苦手。黒く長いくちばしで田んぼなどの湿った土地をまさぐって餌を探す習性があるのです。

 市役所では、田んぼがトキの餌場になるよう「生きものを育む農法」でお米を栽培する農家を認定する「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を発足。そこに元から環境問題に関心の高い農家が集まり、共にトキが安心して暮らせる田んぼでの米作りを目指したのです。

野村圭佑さん画像

西牧孝行にしまきたかゆきさん

佐渡市役所 農林水産課 農業政策室 生物共生推進係係長。佐渡生まれ佐渡育ち。地元佐渡と「朱鷺と暮らす郷」のアピールに全国各地を飛び回る毎日。お客さんと直接語り合える米屋さんに「朱鷺と暮らす郷」を知っていただきたい、もっと多くの方に「朱鷺と暮らす郷」を味わって欲しいと語ります。

佐渡の米「朱鷺と暮らす郷」

品種はコシヒカリ(佐渡産コシヒカリ)。トキと共生できる田んぼ作りを行った末にモチモチとした、冷めてもおいしいお米が誕生。お弁当やおにぎりに最適と評価されている。売り上げの一部は「佐渡市トキ環境整備基金」に寄付される。

「生きものを育む農法」とは

 田んぼの畦際を掘り起こし、江(え)を設置しました。江というのは小さな水辺のことで、これにより夏場に田んぼの水を抜いても生きものが逃げられる場所を確保できます。また、川などの水辺と田んぼの間を生きものが自由に移動できるような魚道も設けます。その工夫は農閑期(のうかんき)の冬にもあります。雪が積もることもある冬には、田んぼの中で生きものが生息できるように水をはります(「ふゆみずたんぼ」という)。こうして一年を通して生きものが生息できる、環境を作り出していきました。

 それと並行して「田んぼの生きもの調査」も実施。6月と8月の年2回、田んぼの中や、畔、江、魚道にどんな生きものが棲みついているか確認し、その記録を取りまとめていきます。

「これらの取り組みは大変人の手がかかる活動です。けれど、田んぼの中に生きものがたくさん棲みつき、ようやく田んぼにトキが舞い降りるようになった時、その美しい姿を見て農家の方もさらにがんばれると言いました。そこに人とトキと生きものが共に生きられる環境が出来上がったのです」(西牧さん)。

 さらにこの取り組みと米作りは世界的にも注目され、「トキと共生する佐渡の里山」として2011年に日本初の世界農業遺産(GIAHS(ジアス))に認定されました。

 お米の食味や収穫率を高める農薬や機械を使った農法ではなく、生きものと共生できる環境を目指したことで生まれたおいしいお米。特別天然記念物のトキが餌をついばむ田んぼで育った、その豊かで滋味あふれるお米を私たちもぜひ一度味わってみたいものです。

江の設置

田んぼの周囲を掘り起こして江を作ります。夏場には稲の成長のために水を抜きたい田んぼの、重要な水辺確保の場所となります。

魚道の設置

田んぼと水路をつなげて生きものが自由に行き来できる道を作ります。

田んぼの生きもの調査

年2回実施する調査は、農家のみならず、地元の小学生も参加し全島で実施。トキと暮らす田んぼの様子が学べます。

うちの田んぼにトキが来た!
その喜びと誇りが毎日のエネルギーの源です。

 佐渡島中央に位置する金井地区で「朱鷺と暮らす郷」を育てる池田さんは、10年前に佐渡市が取り組みを始めた時からの賛同者です。

「私は東京からこちらに戻って始めた新規就農者なので、いろいろ学ぶつもりで市の支援が受けられるというこの農法に参加したんです。でも1年目はドジョウが、2年目はタニシ、3年目はカエルが異常発生してびっくり。しかも柔らかすぎてコンバインの入らない場所は手作業になるし、冬の管理もあります。手のかかる作業ばかりですから一時は心が折れそうになりましたよ。しかも従来の田んぼに比べて周りに江を作る田んぼは米の収穫量も7割くらいに減ってしまいます。減収に直結しますから悩みます。でも4年目には生きものの種類や数も落ち着いたし、何よりうちの田んぼにトキが舞い降りたのを見た時の感動が忘れられません。自分がやってきた苦労は無駄ではなかったと、力がみなぎってきた気がします。今ではこの田んぼを誇りに思っています」と嬉しそうに語ってくれました。

 池田さんのように最初からの賛同者は多くはありません。でもこうして楽しみながら取り組む人が増え、今では参加農家も500人を越え、作付面積も全体の3割近くに増えました。皆さんもトキが舞い降りる田んぼ作りに池田さん同様の誇りを持っている方ばかり。それもこの米の見えない魅力のひとつです。

池田広之さん画像

佐渡市認定農業者
池田広之いけだひろゆきさん

都会暮らしを捨てて佐渡に戻った新規就農者。今の米作りが大好きで「朱鷺と暮らす郷」のアピールにも積極的です。「市から声がかかったらすぐ飛んで行くよ!」と明るく答えてくれました。もともと有機農業や環境保全型農業を営む、県認定のエコファーマー(「朱鷺と暮らす郷」生産者の必須条件)。

世界農業遺産とは

日本の世界農業遺産

● 2011年6月認定

新潟県佐渡市
「トキと共生する佐渡の里山」

石川県能登地域
「能登の里山里海」

● 2013年5月認定

静岡県掛川周辺地域
「静岡の茶草場農法」

熊本県阿蘇地域
「阿蘇の草原の維持と持続的農業」

大分県国東半島宇佐地域
「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」

● 2015年12月認定

岐阜県長良川上中流域
「清流長良川の鮎」

和歌山県みなべ・田辺地域
「みなべ・田辺の梅システム」

宮崎県高千穂郷・椎葉山地域
「高千穂郷・椎葉山地域の山間地農林業複合システム」

 世界農業遺産とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形作られてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ、生物多様性などが一体となった、世界的に重要な農林水産業システムのこと。イタリア、ローマに本部を持つ「FAO( 国際連合食糧農業機関)」が認定するもので、2017年1月現在、世界16カ国、37カ所がその認定を受けています。日本では今回ご紹介した佐渡の「トキと共生する佐渡の里山」を含む8地域が認定されました。世界的に見てアジアやアフリカなど、伝統農法が継承されやすい、一般に途上国といわれる地域が多いのですが、その中であらゆる面で効率化が発達した先進国ともいえる日本が8カ所も認定を受けていることは注目に値します。

 その地域の気候風土や伝統文化の中で育まれた農法と、そこで生まれた食材。普段見慣れた食材が、その生産地で手間暇をかけ愛情込めて作られたことに感謝し、私たちも愛する家族や友人たちと大切に食べていきたいものです。

「朱鷺と暮らす郷」が買えるのはこちら

http://www.ext-web.net/toki-mai/shop/

ようこそ、伊勢丹新宿本店「Kitchen stage by KaiHouse」へ!

『Kitchen Stage by Kai House 』は、伊勢丹新宿本店の地下1階に設けたイートイン・スペース。2~3週間ごとにさまざまなジャンルの人気料理人や料理研究家たちが考案したメニューを提供しています。カウンター席前のオープンキッチンでは、プロならではの道具使いや盛りつけが繰り広げられ、料理を学んでいる方にとってもプロの業を間近で見られる絶好の場として好評です。

また、「『Kitchen Stage 』で食べたあの味を家庭でも作りたい」、お客さまにそう思っていただけるよう、調理の詳しいポイントに加え、どんな食材や道具を使用しているのかも、配付しているレシピなどでわかりやすくご案内しています。食材や季節感にもこだわった、プロが作る“本物の味”を用意してお待ちしておりますので、ぜひ一度お越しください。

『Kitchen Stage by Kai House』は、スタイリッシュなオープンキッチンを完備。セミナー時には、人気料理人や料理研究家の調理技術を目の前で見ながらお食事ができます。

<2016年11月~12月に提供した料理>

11/16(水)~11/29(火)

南青山の裏路地に佇む『ローブリュー』が初登場。「時間と手間をかけてきちんと作りたい」という櫻井シェフの静かな情熱を感じる滋味深い料理を、代々木八幡の『365日』のパンと一緒にお楽しみいただきました。

11/30(水)~12/25(日)

年末の華やかな時期にご登場いただいたのは、毎回大好評の『アロマフレスカ』。彩り豊かな4種の前菜の後は、香り高いパスタを提供。デザートまでいただける贅沢なコースをお召し上がりいただきました。

<3月~ 4月に登場予定のレストラン・シェフ>

  • 3/15(水)~3/28(火)

    イタリアン

    樋口敬洋シェフ

    茅場町
    <ロットチェント>
    樋口敬洋ひぐち たかひろシェフ

    アラカルト料理が楽しめるサローネグループの『ロットチェント』が初登場。お店こだわりの低加水パスタフレスカを選べるコースをご用意しました。

  • 3/29(水)~4/11(火)

    日本料理

    橋本幹造料理長

    外苑前
    <一凛>
    橋本幹造はしもと みきぞう料理長

    2年ぶりのご登場となる今回は、大分県臼杵市の郷土料理「きらすまめし」をアレンジしたばら寿司など、春らしい料理をご考案いただきました。

  • 4/12(水)~4/25(火)

    フレンチ

    河野 透シェフ

    恵比寿・丸の内
    <レストラン モナリザ>
    河野 透かわの とおるシェフ

    恵比寿と丸の内に2店舗を構える星付きのレストラン。スペシャリテ「トマトのロザス」をはじめ、本場の味を熟知したシェフのレシピをご紹介します。

場所:東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿本店本館B1 明治通り側エレベーター前
10:30~20:00(L.O.19:00)
Tel: 03-3352-1111(伊勢丹新宿本店 大代表)
メニューについては、『Kitchen Stage by Kai House』公式ホームページ内
URL http://www.kai-group.com/fun/kitchen_stage/
※都合によりスケジュール・メニューの一部が変更になる場合がございます。

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