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中国料理を追求した31年間の集大成

インタビュー
2019年07月25日
2018年12月、東京・南青山に「4000チャイニーズレストラン」をオープンした菰田欣也さん。中国料理をひたむきに追求した31年間の集大成となるレストランの登場は、ファンやシェフ仲間から熱烈に歓迎され、開店前から予約が取れない人気店として注目を集めました。これまで培った知識と技術を注ぎ込んだ料理のみならず、有田焼きを始めとする器や、「輪島キリモト」に特注した輪島塗りのランチョン、カナダから輸入した天板など、20席の店内には細部まで菰田さんの思いが込められています。50歳を迎える直前、人生の舵を大きく切った菰田さんに、中国料理人としての生き方をお話いただきます。 >>あの人気料理家も登場! これまでの記事はこちら

祖父母に可愛がられ、のびのび育った少年時代

東京都品川区で、3人兄弟の末っ子として生まれた菰田さん。現在は大都市に発展した品川ですが、少年時代にはまだまだ空き地や原っぱなど遊び場があり、どじょうをすくったりしていたそうです。近所には食肉の卸市場もあり、食べることを身近に感じていました。母親は料理があまりうまくなかったのですが、次兄がインスタントラーメンやしょう油味のスパゲティといったオリジナルなおやつを作ってくれ、それを手伝ったのが料理との出合いです。祖父母も近くに住んでおり、とても可愛がられて育ったとか。
「祖父母の家は、わが家とは異なり、何でも手作りしていました」。おばあさまに習ってさつまいもを裏ごししたり、かつお節を削ったりした体験が基になり、中学校に進んだ頃には、自然と料理の道を志すようになりました。
高校を卒業すると、迷うことなく大阪あべの辻調理師専門学校に進学。このときはまだ、「一生を中国料理に捧げる」とは思っていなかったとか。「当時よく見ていたテレビ番組『料理天国』(TBS系)の影響もあって、フランス料理をやってみたい。イタリア料理もかっこいいなんて思っていました」と笑います。

中国料理ひと筋の人生を決めた、陳建一さんとの出会い


専門学校に入学した菰田さんは、中国料理を専攻します。「当時は深く考えていたわけではないのですが、実習をしてみて、日本人だから和食はもちろんおいしい。フランス料理やイタリア料理といった洋食も、華があるしおいしい。でも中国料理は、それらを超えてものすごくおいしいと感じました」。
そんな菰田さんの人生を変えたのが、特別授業の講師として来校した陳建一さんでした。初めて間近に見た陳さんのプロの技術は、19歳の菰田さんの想像を超越したもので、「この人は天才だ」と思ったそうです。
専門学校を卒業し、憧れの陳さんのもとに就いたものの、もちろん初めから料理を任されたわけではありません。そこで菰田さんが取り組んだのが、ひとつひとつの仕事の意味を突き詰めることでした。たとえば買い物に行くときも、言われたものをただ買うのではなく、素材を学ぶ機会と捉えて吟味し、なぜその食材を選んだのか理由を明確にする。そういった地道な作業を積み重ねてきたのです。「当時はインターネットもありませんでしたので、勉強といえば本を読むか、仕事を通じて学ぶか。学校でいう予習・復習を料理に置き換えると、予習は本などで知識を得ること、復習はそこで得た知識を基に実際にやってみること。学校の勉強は、予習も復習もまったくやらなかったのに、料理だと継続できるものですね(笑)」
朝早くから夜遅くまで仕事が続く現場も、「最初は今日一日を生き抜くことでいっぱいいっぱいでしたが、今考えるとまったく辛くなかった」そうです。

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撮影/土田有里子 取材・文/江藤詩文

菰田欣也(コモダ キンヤ)さん
1968年、東京都生まれ。高校卒業後、大阪あべの辻調理師専門学校に入学し、19歳で陳建一氏と出会う。その技に魅了され、1988年「赤坂四川飯店」に入社。大ヒットした料理バラエティ番組『料理の鉄人』(フジテレビ系)では、陳建一氏の右腕として大活躍する。2001年、32歳で「szechwan restaurant(スーツァン・レストラン)陳」の料理長に就任。2004年、中国・広州で開催された「第5回中国料理世界大会」の「熱菜部門」で日本人初の金賞を受賞。2008年、四川飯店グループ全体の総料理長に就任。2013年、中国の国家資格である中華中医薬学会の「栄養薬膳師」免許を取得。2017年、満を持して独立。火鍋専門店「ファイヤーホール4000」を五反田に開店。2018年、同麻布十番店を開店。同年12月、31年のキャリアの集大成となる「4000チャイニーズレストラン」を南青山にオープン。

ヨンセンチャイニーズレストラン
港区南青山7-10-10 パークアクシス南青山7丁目
Tel:03-6427-9594
https://minamiaoyama4000.jp

徳島産の阿波尾鶏と気仙沼産のフカヒレを8年ものの瓶出し紹興酒で煮込んだ「鶏肉とフカヒレの紹興酒煮込み」。器は特注した有田焼き。

愛用品のひとつである貝印の低温調理器。豚肉や牛肉をやわらかくジューシーに仕上げるのに活用しています。

四川料理の味の決め手となる豆板醤は、自家製のものを使っています。完全発酵させると、辛味よりうま味が際立つようになるとか。

料理人になりたての頃から繰り返しページをめくってきた愛読書。料理人として原点に立ち返る教科書のようなもので、今も手放せません。