食べチョク 秋元里奈さん

インタビュー

料理人をはじめ、料理にまつわるスタイリストやフードコーディネーター、カメラマンなど、食を支えるクリエイターのインタビューをお届けする連載。料理への向き合い方、仕事観、読者のスキルアップのためのノウハウなど、食を支え、未来を描こうとする様々な職種の方々の料理に対する考えや思いを語ってもらいます。

2020年12月17日

生産者から直接食材や花などを取り寄せるオンライン直売所「食べチョク」は、2020年、もっとも注目されたサービスの一つです。新型コロナウイルスの感染拡大が広がる中、緊急事態宣言による外出自粛で「おうち時間」が増えると利用者が17倍に増加。さらに、飲食店の営業自粛で売り先をなくした生産者の契約数も3倍に増え、月の流通額も38倍になったといいます。「生産者の“こだわり”が、正当に評価される世界へ」というビィジョンを掲げて走り続ける“強い”秋元さんの原動力とは何かを聞きました。

コロナ禍で人の心は「裏側」の人たちに向かうようになった

「コロナの報道が始まった頃、スーパーで買い占めが起きたりしたことで、当たり前のように買っていた食材の、『作り手』や『運ぶ人』という裏側の人たちに意識が向き始めたように感じています。さらに、そういった裏側の人たちに還元される買い方や、負担を減らす買い方に多くの人が関心を持つようになった。そこに食べチョクのコンセプトがすごくはまったんだと思っています」

爆発的に利用者や登録生産者が増えるなかで、社員わずか10名だった食べチョクでは、文字通り寝る間を惜しんで問い合わせに対応していたといいます。もちろん代表の秋元さんも実務対応に入り、朝4時まで会社で問い合わせ対応をしては、そのまま社内のソファーに倒れ込んで寝入るような生活を3カ月間続けたそうです。

「食べチョクとしては、利用者さんや契約生産者さんが増えることを想定して、3年前から段階を考えながら拡大してきました。たとえばコロナ禍で、オーガニック栽培だけの取り扱いを慣行栽培まで基準を広げたのも、実は今年中にやろうとしていたこと。以前の基準では、『農薬化学肥料は使うけどとにかく味にこだわっている』という方などはお断りせざるを得ませんでした。こだわりを持っているのに売れない生産者さんがいることは、『こだわった人たちを埋もれないようにしていく』という食べチョクにとって本質的じゃない、と以前から考えていたことなのです」

登録基準を変更することによって、選びづらさを解消するサイトのデザインや、登録審査に関する基準の改善などを緊急に整備する必要があったといいますが、それもあくまで想定していた範囲内のこと。食べチョクとしては、近い将来取り組もうとしていたことを前倒しにして進められた期間だったと捉えています。

「コロナ禍では応援消費といわれる、直接生産者さんから買って特定の人を応援するという動きに合致していたので、多くの人に食べチョクを使っていただけたのかなと思っています」と秋元さん。

 

小さくても強いチームを作る5つの行動指針

コロナ禍の5月には、フランスのフレンチシェフが率いるシェフ団体「#CookForJapan」とコラボレーションして、食材とシェフのレシピがセットになった「一流シェフのレシピ付き商品」のサービスを開始。7月にはテレビCMの放映が始まるなど、スピード感を持ったリリースが続きました。決して人材が豊富でない食べチョクのチームを、秋元さんはどのようにリードしていったのでしょうか。

「まだまだアーリーフェイズな会社なので、①第一次産業への共感度②スタートアップマインドがあるか③中途でスペシャリスト、『ビィジョン』『カルチャー』『スキル』の3つを採用時に見ています。あとは、私たちのありのままを伝えることです。たとえばマーケティング担当として入ってもカスタマーサポートをやってもらっていますし、エンジニアもマルシェで野菜を販売する。総動員でやっていることをポジティブに『めちゃめちゃ楽しそう』と捉えてくれる人がいいと思っています」

さらに、入社後も以下の5つの行動方針を共有し、社員同士の会話も、その言葉を使ったコミュニケーションをとるようにしているといいます。

①「生産者ファースト」――主語を生産者に
②「本質思考」――ヒトではなくコトに向かう
③「WOWを届ける」――期待値を認識しそれを越える
④「全方位リスペクト」――会社に関わる全ての方をリスペクト
⑤「スピードで勝負」――第一次産業の廃業は待ってくれない

「このなかでは、『スピードで勝負』が特殊かもしれません。第一次産業は、基本的に1つの作物は1年間に1度しか作れないので、とてもゆっくりな業界。10年、20年かかって当たり前といわれています。しかし、私たちはあくまでも出来たものを売っている会社なので、それはあてはまらないんです」

とくに近年は1年に数件、生産者が廃業しています。数年単位でのんびりと進めていると、次々に生産者が廃業してしまう。コロナ禍でSOSを発している生産者のためにも、早く動いて助けるということを大事にしてきたといいます。

「この行動指針がみんなで共有できていたので、コロナ禍でも食べチョクでは一早く動けたのだと思っています」

「上場するまで食べチョクTシャツを着続ける」ことを投資先への条件にしていた秋元さんは、この日のインタビューでも食べチョクTシャツを着用。現在同じTシャツを30着ほどもって着まわしている。「生産者応援」のTシャツは、テレビ出演用の別モデル。

 

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撮影/大平正美 取材・文/江六前一郎

秋元里奈さん

1991年、相模原市の農家に生まれる。慶應義塾大学理工学部卒業後、DeNAにてwebサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げ、スマホアプリのマーケティング責任者を経験する。2016年11月にvivid garden創業。2017年に農家や漁師がオンラインで直売できる「食べチョク」を立ち上げる。2020年9月から情報番組『Nスタ』(TBS系列)の水曜レギュラーとしても活躍中。

 

食べチョク https://www.tabechoku.com/

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