家族の時間に溶け込むような、誰からも愛される日常のお菓子たち
2019年9月にオープンした「Equal」。後藤さんが目指したのは。親子連れからお年寄りまで誰もが気軽に立ち寄れる、地域に根付いた“街のお菓子屋さん”です。店名も馴染みのある英語からとって、親しみやすさを第一に考えたそうです。
扉を開けると、従来のパティスリーとは違った唯一無二の空間が広がります。ジュエリーケースのような楕円形のショーケースを主役に、ヨーロッパのアンティーク家具や地中海の青色を思わせるイタリア製の床など、さまざまな国のアイテムがミックスされながらも不思議と調和しています。
特注品のショーケースは、作り手とお客さんを隔てる結界ではありません。「子どもたちが来たときに自由に走り回れるようにとの考えから角のない楕円形にして、スタッフの後ろ側にも行けるようにしています。実際、お子さんたちは好奇心いっぱいの目で、ショーケースの後ろにも回り込んできてくれますね。お客様との距離が近くて嬉しいです」と、野口さんが笑顔で語ります。
この素敵なショーケースに並ぶのが、シュークリームとチーズケーキの2種類です。
「誕生日や記念日など特別な日を彩るケーキではなく、なんでもない日に家族が買って帰る、家族の時間にあるお菓子を作りたかったんです。それって何だろうと考えたときに、後藤シェフがイメージしたのがシュークリームでした」
試行錯誤の上に生み出された、今やこの店を代表するメニューとなったシュークリーム(280円)は、やや小ぶりなサイズで上品な佇まい。カリッとしたシュー皮の中は、後味軽やかなカスタードクリームがたっぷり詰まっています。クリームの火入れ時間を極力短時間にとどめることで、もったりしすぎず透明感のある味わいに仕上がるのだそう。「私自身、あまりシュークリームは得意ではなかったんですが、これは大好きです。苦手な人にもぜひ一度試していただきたいですね」と野口さん。