伝統と新しさが交錯する、メキシコのソウルフード
2018年9月、東京・三軒茶屋にオープンした「ロス・タコス・アスーレス」は、メキシコ人シェフがメキシコのソウルフードの「タコス」を、クリエイティブな発想で楽しませてくれる専門店。素材選びから食材の組み合わせ、製法、プレゼンテーションなど、新しさと伝統を織り交ぜた温故知新なアプローチが人気です。タコスは、とうもろこしの粉や小麦粉を練って薄く伸ばして焼いたトルティーヤに、肉や野菜、チーズなどの具材を挟んでサルサ(ソース)を添えて食べるのが一般的ですが、トルティーヤの原料に店名にもある“青”(=Azules)い粒のブルーコーンを使用しているのが特長です。
「青いとうもろこしだからいい、というわけではありません。ブルーコーンは、メキシコの田舎では普通に食べられているものの、都会では見られなくなったメキシコの在来種。僕がブルーコーンを選ぶのは、まず味が良くて、遺伝子組み換えされていないこと、そして失われつつある伝統的な食文化を守っていきたいからなんです」
こう語るのは、流ちょうな日本語を操り、和食にも造詣が深いオーナーシェフのマルコ・ガルシアさん。メキシコ・オアハカの農家から買い付けるブルーコーンを店内で挽き、サーブする直前に生地を専用の機械でプレス、熱い鉄板で一枚一枚焼き上げています。一般的な品種よりもひときわ甘さと香りの濃いブルーコーンを使い、手作業による伝統的な製法で作るトルティーヤは、メキシコ人をもってしても“別物”という奥深い味わいに。