食材の声を聞き、対話を繰り返して生み出す新しい中国料理
東京・南麻布の有栖川宮記念公園からほど近い、閑静な住宅街にある中国料理店「茶禅華 (サゼンカ)」。中国料理と日本料理の名店で研鑽を積んだシェフの川田智也さんが、元欧州大使公邸を改装したシックで趣のある一軒家で腕をふるっています。川田シェフがテーマに掲げる「和魂漢才」とは、中国伝来の学問や知識を、日本人固有の思想や精神をもって学び、独自の文化として成すこと。小学校入学前には中国料理人を志し、「麻布長江」でキャリアをスタート、中国料理を極めるために「日本料理龍吟」で日本料理を学び、この「和魂漢才」の思想に導かれました。
「修業時代に何度も中国に足を運び、そこで得た素晴らしい技術や知識をそのまま表現して料理してもなぜかうまくいかないものもありました。その頃の僕は日本の食材の声を聞かず、一生懸命中国語のみで食材に話しかけていたんです。だからうまくいかない。そこで、生涯をかけて日本で中華料理をやっていくには、日本の食材の声を聴くことに関して最高峰である日本料理を学ぶべきだと、門を叩いたのが『日本料理龍吟』でした。料理の心を教わるなか、暦や禅、器、お茶など、日本には中国から伝来してきた文化や習わしが数多く存在することを知り、日本でしかできない中華料理を作りたいと考えるようになりました」
日本料理を学ぶ過程で、滋味を深く感じられるようになり、料理に繊細さが生まれたと話す川田シェフ。今では作る料理によって頭を切り替え、四川料理を作るときは豪快に、広東料理のような優しい味を作るときは繊細にと、別人になる感覚で調理しているそうです。