「Sublime(スブリム)」フランスと北欧が調和する美しきガストロノミー

国籍にとらわれず、さまざまな調理法にシェフ独自の解釈を加えた、オリジナリティにあふれる「イノベーティブ」。今月は、『ミシュランガイド東京 2019』の「イノベーティブ」部門で、3年連続の一つ星を獲得した実力派レストランを訪ねました。

2018年12月7日

グローバルな視点と繊細な美的感覚が生む、珠玉の一皿

2015年秋に東京・新橋にオープンし、2017年8月より食の激戦区・麻布エリアに移転した「Sublime(スブリム)」。シェフを務める加藤順一さんは、フランス料理界の重鎮・吉野建シェフのもとで伝統的なフランス料理の基礎を学んだ後、パリの三ツ星レストラン「アストランス」でモダンフレンチを体得。さらに、デンマークに2年間滞在してナチュラルで前衛的なアプローチを経験した、グローバルな視点・視野を持つ料理人。オーセンティックなフレンチの知識と技術、繊細な美的感覚を持ち合わせ、斬新さと王道のおいしさを両立する料理で多くの人を魅了しています。

店内はシンプルシックなインテリアで、開放的なオープンキッチン。ランチタイムには店内奥の大きな窓からたっぷりと光が差し込み、ディナータイムは落ち着いた明りのライトがテーブルを照らします。ランチはスナック数種・前菜2品・メイン・デザートの構成となり、メインが1品(魚または肉)で¥4,500、2品(魚と肉)で¥6,500。ディナーのおまかせコースは、スナック3~4種・前菜3~4品・魚料理・肉料理・デザート2種・お茶菓子の計10~12品で¥12,000。コースのうち数皿はシェフが自らサーブしてくれるので、カウンターはもちろん、テーブル席でもシェフとの会話を楽しむことができます。

「お料理を淡々と味わっていただくのではなく、最初のフィンガーフードで視覚的に遊んだり、前菜やメイン、デザートではお客様の目の前でプレートに何かをかけたりと、動きがあるプレゼンテーションをしています」

とにかくきれいなもの、美しいものを作りたいと意識しているという加藤シェフ。単なる奇抜なアイデアではなく、色彩学に基づいた感性で表現する芸術的なアプローチで、躍動感や静寂といった緩急のついた演出を視覚から訴えかけています。

「美的センスは、モードと同じく、国や時代によって変わります。フランスでは決まった設計図から1ミリの狂いもないものが美しいとされ、北欧ではナチュラルでランダムに見せようと、あえて無造作な盛り付けをします。また、分子調理を牽引するスペインでは、素材感をなくす科学的なアプローチが多い。そんな中、スブリムのコースでは、北欧っぽい仕立てのフィンガーフードや前菜で始まり、メインは誰もがおいしいと認めるクラシックで王道のフレンチをお出ししています。コースを一通り味わった後、ちゃんと『おいしかった』という印象を持ってほしいという想いを込めています」

メニュー作りでは、シェフ自身がその季節に食べたい食材をリストアップ。その中から素材の持ち味を活かせる仕立てや調理法に落とし込むため。技法はあくまで味を引き出すための手段だと話します。

「フレンチや北欧はもちろん、必要ならば和食の技術も使います。長い歴史を持つフランス料理は技術が確立し、調理法も体系化されていますが、その絶対的なおいしさに加え、素材感を重視したのがスブリムの料理。たとえば、伊勢海老をフランス流に調理するとソースがおいしすぎて、車海老でもオマール海老でも同じ味になってしまう。だから、伊勢海老の生の甘さとぷりぷりとした弾力を活かした調理法にして、生姜を使ってとろみをつけたシンプルなソースをかける、そんな引き算的な考え方をしています。そこが和食に通じますね」

さりげない仕掛けが満載のランチ&ディナーコース

クラシックなフランス料理を学び、最先端といわれる北欧を経験した、日本人である加藤シェフが作る料理。表現の幅を広げるためにいろいろなテクニックを散りばめながら、理に適った調理法で仕立てられたコース料理の一部をご紹介します。

生ハムと同じ製法で限りなく生に近い状態に仕上げた牛もも肉を使った、前菜の「十勝ハーブ牛のタルタル」。肉にマヨネーズを合わせる北欧スタイルで、牛肉にはスモークをかけて、マヨネーズはかつおぶしで風味付け。ヨーグルトを3時間以上かけて炒めて作るクランブルで酸味とカリカリ感を加え、ハーブをトッピング。かつてのレギュラーメニューで、現在はリクエストに応じて提供される裏メニュー。

修行をした「タテル・ヨシノ」で、加藤シェフが最も好きだという「ジビエのパイ包み焼き」を、スブリム流に再構築。「肉の配合と生地をアレンジし、青首鴨とフォアグラ、ジビエのミンチ肉のハンバーグを、クロワッサン生地で包みました。肉の火入れと生地のサクサク感を重視し、焼き上がりのタイミングが合う発酵クロワッサン生地を選んでいます」。手の込んだ贅沢感のあるお料理で、この冬吉野シェフにあらためて手ほどきを受け、初提供されることになったという逸品。

大人の女性の琴線に触れること間違いなしのデザート「バラと灰」。熊本・阿蘇山の麓で育った食用バラと、バラの花びらを焦がした灰を使った、加藤シェフ自身が会心の作と話す一皿。灰でコーティングしたバラのアイス、石に見立てた灰のメレンゲ、バラのムース、バラのピクルス、バニラオイル香るタピオカスターチを盛り合わせた、ランダムで北欧的な仕立て。「パティシエではなく料理人なので、甘みのある料理と捉えてデザートを作っています」

「素材の味を活かす調理法」とは?

加藤シェフがたびたび口にする「素材を活かした調理法」。熟練のプロでないと難しいアプローチに思えますが、最後にこんなヒントをくれました。

「自分のレシピを作るときに、最初は“この食材をこう食べたい”から始めればいいと思います。茹でる・焼く・揚げる・蒸す・スモークをかけるなど、調理法はいろいろありますが、特定の素材をどう食べたらおいしいかは、普段の食事から自然に学んでいるはず。そして、なぜこの調理法だとおいしくなるのかを考えてみる。そこには理由がありますから。調理法に決まりはないですし、味の好き嫌いは個人の主観。僕も自分がおいしいと思わない調理法は使いません。そのうえで、レパートリーを増やしたり食を仕事にしたりしたいなら、きちんと勉強すればいい。いろんなジャンルのものを食べ歩き、新しい発見をしていくのがおすすめです」

レストラン名の詳細情報

店名 Sublime(スブリム)
電話番号 03-5570-9888
URL https://www.sublime.tokyo/
住所 東京都港区東麻布3-3-9 アネックス麻布十番1FGoogle Mapで確認
ジャンル イノベーティブ・フュージョン

撮影/大木慎太郎  取材・文/江原裕子

シェフの紹介
加藤 順一(カトウ ジュンイチ)さん
1982年、静岡県生まれ。2003年、辻調理師専門学校フランス校卒業後、「タテル・ヨシノ」グループに入店。「タテル・ヨシノ・芝」「オテル・ド・ヨシノ」にてクラシックなフランス料理を体得。2009年よりパリの三つ星「アストランス」、2012年よりデンマーク・コペンハーゲンの星付きレストラン「AOC」、「マーシャル」(ホテル・ダングルテール)にて研鑽を積む。帰国後、2015年「Sublime(スブリム)」のオープンとともにシェフに就任。


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