特集記事

イタリアから日本へ 食文化の架け橋に

インタビュー
2020年02月25日
初めてのレシピ本を出版したり、レストランをオープンしたり。食に関わる仕事でひとつの夢を叶え、ターニングポイントに立った話題の料理家や食に関わる職業の方へのインタビューをお届けする新連載。「何かはじめたい」という思いを持った人へ、一歩踏み出すためのヒントに溢れています。

シルバさんの天性のセンスが光るシャビーシックな雰囲気のカフェ。

 

初のオリジナルレシピ本が出版

2019年秋には、シルバさんのレシピ本『La vie A la Campagneのジャムとパンのオリジナルレシピ』が出版されました。撮影は2週間かけて125種類のレシピを撮りおろし、ジャム作りだけでなく、スタイリングも自ら手がけたそうです。

「自分の本を出すなんて思ってもいなかったんですが、もともと僕のお店のファンだった編集者の方から企画をいただいて、今までやってきたことが形として残るのはいいなと思ってお引き受けさせていただいたんです。お店の器を使ってスタイリングをやったのも楽しかったですね。本を見て作ってくれた人に、“こんな味になるなんて思っても見なかった”とか“思ったより簡単にできた”と喜んでもらえたのが嬉しかったです」

シルバさんのジャムには、彼にしか出せない唯一無二の魅力が詰まっています。オレンジとニンジンなど意外な素材の組み合わせだったり、大根などを使った野菜ジャムもユニーク。

「ジャム作りはインスピレーションですね。味はもちろん、色とのバランスも考えていますが、1番大切にしているのは、絶対に‘’安心・安全‘’であるということ。食は日々、口に入るものであるので、体にとってやさしいことが第一だと私は思います。だから、僕のジャムは通常のものに比べて砂糖をあまり使っていないんです。さらに添加物も使っていないから、保存期間を高めるためにも、銅鍋でじっくり煮込むなど手間暇かけて仕上げています。

また、その土地でしかとれない食材を使って、自分にしか作れない味を出すのも醍醐味。宮古島の店舗では、マンゴーやパイナップル、アロエ、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツなど、東京では見かけない食材のジャムを作っています」

『La vie A la Campagneのジャムとパンのオリジナルレシピ』(日本文芸社)。オリジナルジャムのレシピのほか、ジャムを使ったレシピ、ジャムとの相性が抜群なパンのレシピも掲載。

 

夢を実現させるために大切にしているマインドとは?

カフェの運営のみならず、自身のアパレルブランドも持ち、成功させているシルバさん。現在は、宮古島で開業するホテルの準備に夢中だそう。次々とやりたいことを形にするその秘訣は、どこにあるのでしょうか?

「自然体で好きなことを追求しているだけです。最終的には自分のセンスを信じること。そういうセンスは、自分が心地よく過ごせるように気をつけているから身についたのもかもしれないですね。僕は、自然光の中でゆったり過ごしたり、アンティークなどの古いものを大事に使うことが好きなんです。でも、好き、という気持ちだけじゃダメ、高級なものを出せばよい、という考え方だけじゃダメだと思います。プロとして何を提案して、どのような満足を与えられるかを日々考え、実現させることが大切。だから、カフェでも洋服作りでも、自分だけでなく誰かを幸せにすることが根底にあります。お店のスタッフにも、お客様に対しておもてなしの心をいつも持っていて欲しいと伝えています」

幼い頃からヨーロッパ各地を訪れ、さまざまなものに触れて独自の美意識を磨き上げてきたシルバさん。好きなことをやっているだけではなく、その心にあるのはいつも“誰かの幸せのために”。そんな幸せのおすそ分けが、周囲の人を魅了するのかもしれません。

1Fで販売されている天然酵母パンも大人気。「パンは独学です。日本には何でもあるけど、ここにしかない味を出したい」と語るシルバさん。

 

季節の素材を使って作る彩豊かなジャムがずらり。

 

1 2

撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

ロシャン・シルバさんプロフィール

イタリア生まれ。中目黒「La vie a la Campagne」オーナー。現在、鎌倉、神戸、大阪、福岡、札幌、宮古島に支店を展開する。アパレルブランド「THE FACTORY」のデザイナーであり、アロマグッズ「Ambiente」のプロデュースも手がける。

La vie a la Campagne
住所:東京都目黒区上目黒2-24-12
電話番号:03-6412-7350
営業時間:9:00~19:00(水〜18:00)
定休日:無休
http://lateliermaisoncampagne.com/