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相手のニーズを理解して、体現する方法

スキルアップ
2020年02月18日
いま、飲食業界には、テクノロジーの進化によって様々な変化が訪れています。料理を取り巻く最新の動向にくまなくアンテナを張ることは、時流を捉え活躍する料理家への近道です。本連載では、情報発信ツールの活用法やレシピ開発、料理教室運営方法のノウハウなどをお伝えしていきます。調理技術を磨くと同時に、情報をアップデートし、“できる料理家”を目指しましょう。

第四回は、レシピ提案からフード撮影スタイリングにいたるまで、“シーンやターゲット層によって異なるお皿の先のストーリーまで大切に寄り添う”をモットーに活動している、フードコーディネーターの綱渕礼子さん。企業からのオファーが絶えない、プロの仕事術の秘訣についてお話を伺いました。

レシピ・メニュー提案や撮影現場での仕事でモットーとする5か条とは?

企業からのお仕事の依頼に関して、綱渕さんが心がけていることは5つあるといいます。①丁寧にヒアリングする、②提案は依頼数より多めに、締め切りより余裕を持って提出③ターゲット層の好みやトレンドを調べる④黒子に徹し、カメレオンで対応する⑤現場で発生する希望にもオールYES精神で。この5か条は綱渕さんが仕事をする際、いつも念頭に置いているそうです。5つのポイントについて、詳しくお話を伺いましょう。

まず①(丁寧にヒアリングする)は、納期までの限られた時間の中で、クライアントとの認識のすれ違いを防ぎ、希望イメージからずれない内容にし、効率的に仕事を進めるために大切なポイントだそうです。「クライアントがどのようなレシピやメニュー、撮影イメージを欲しているのか、ターゲット層に合わせた調理工程のレベル、どういうカラーのスタイリングでどのような層に向けて発信していきたいのかなど、細かくヒアリングすることでコンセプトが明確になるので、こちらも提案しやすくなります。この点を曖昧なまま自己判断で進めてしまうと、お願いしたイメージと違った、と再提案・再撮影などが発生して納期をすぎてしまうということにもなりかねません」


レシピやスタイリングの提案では、ビジュアルイメージを明確に伝えるために自らスケッチをしてイメージを膨らませている。ノートは常に持ち歩き、撮影&レシピアイディアを思いついた時にすぐにメモしているそう。

 

②(提案は依頼数より多めに、締め切りより余裕を持って提出)は、先方から再提案を依頼された場合でも、納期期限内にスムーズに対応できること以外にいいことも。「レシピ提案は早め且つ少しおまけの感覚を心がけていて、例えばレシピ4点を依頼していただいたら、文章上の提案ではありますが、先方の選択肢を増やせるよう8点提出することも。大前提として要望通りのレシピを提案しながら、こういうレシピも面白いかな~と思うものがあれば、押し付けにならない程度に提案することで、採用数が増えることもあります」

③(ターゲット層の好みやトレンドを調べる)は、商品を売るターゲット層の好みやトレンドを知ることで、より響くレシピを提案するための方法です。「ターゲット層にとってのトレンド料理や興味のあるメニューを把握することはもちろん、それ以外の分野でも今何がトレンドなのかも把握して、レシピ提案でも撮影でもストーリー性のある提案を心がけています」

④(黒子に徹し、カメレオンで対応する)は、主役はあくまでもクライアントであり、お客様であるという考え方によるもの。「個人の世界観や個性を求められる料理研究家やインスタグラマーの方への依頼と異なり、フードコーディネーターやスタイリストとしていただく依頼は、黒子に徹しています。クライアントらしい魅力が伝わるレシピや撮影スタイリング、企業のターゲット層が求めているものを第一に考えることが大切なので、カメレオンのように柔軟に変身しています(笑)」

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撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

網渕礼子

2012年江上料理学院にて正社員として勤務。助手業務を経て自身も講師経験を積む。在籍中に非常勤務講師に転向してフリーランスとしての仕事も開始、2019年同社を退社。現在はフリーランスで料理講師・フードコーディネーター ・スタイリストとして活動中。レシピやメニュー開発、フード撮影など活動は多岐に渡る。