特集記事

相手のニーズを理解して、体現する方法

スキルアップ
2020年02月18日
いま、飲食業界には、テクノロジーの進化によって様々な変化が訪れています。料理を取り巻く最新の動向にくまなくアンテナを張ることは、時流を捉え活躍する料理家への近道です。本連載では、情報発信ツールの活用法やレシピ開発、料理教室運営方法のノウハウなどをお伝えしていきます。調理技術を磨くと同時に、情報をアップデートし、“できる料理家”を目指しましょう。

⑤(現場で発生する希望にもオールYES精神で)は、一見困難な要望でも、最善の手を尽くすことで解決方法の発見につながり、自分自身のスキルアップにもつながると言います。「撮影現場などでは、この味噌汁の具を移動させて欲しい、麺の動きをこうして欲しいなど、いろいろな要望が飛び出します。先日の撮影では、こんにゃくをアラジンの絨毯のように飛ばしたいなども!どうしたらそれが可能かを考えてチャレンジしてみると、意外にも成功して現場が盛り上がったりします。私に仕事を頼んでよかったと思ってもらいたいので、小さなことにもとにかく全力を尽くすことを心がけています。そういった小さなことでまた一緒にお仕事しましょうとお声をかけていただけることが多いかもしれません」


撮影時に重宝する壁紙や撮影ボードは、リースをするだけではなくあらゆる撮影シーンを想定し、漆喰風やレンガ風などさまざまなタイプのものをストックしている。

どんな要望でも現場で対応できるよう経験を通して増えている裏技グッズは、スタイリングの仕事で使う小道具たちの一部。

綱渕さんが企業向けスタイリングの研修で講師を担当したときの資料。料理が美味しく見えるアングルやスタイリングのコツについて、今までの経験で培ったテクニックを余すことなく盛り込んだ。

 

いろんな体験をすることで、自分の幅が広がり自信になる

綱渕さんは日頃からアンテナを張り巡らせ、引き出しを多くしておくそうです。

「メニュー・レシピ提案や出張講師では、私は専門分野がないので本当に何でも屋。和洋中からエスニックなどジャンルも多彩で、普段の家庭料理からお酒のお供、おもてなし料理やフィンガーフードまで提案する機会があります。そのため日頃から幅広く情報を集め、試作をしています。外食でも情報収集も兼ねて、赤提灯系から星付レストランまでさまざまなジャンルを食べるようにし、常にアンテナを張っています。食いしん坊なだけもありますが・・(笑)

素敵な広告のキャッチコピーや面白いものは写メしたり、レシピ本に限らずいろんなジャンルの本を読んだり、日々のちょっとした経験もある時ヒントになることも多いです。従事していた料理学校では20代から80代までの講師の中で仕事をしていましたし、生徒さんも老若男女の幅広い年代層の方々でした。同年代や自分自身と似た生活環境以外の方々と接する経験も、撮影イメージや提案時のターゲット層対応に活きることもあります」

仕事へのプレッシャーはどのように乗り越えているのでしょうか?

「最初の頃は緊張や不安の方が大きかったのですが、経験を積み重ねて行くうちにワクワクに変わりました。今では、新しい自分の課題に出合うとどうやってクリアするか燃えるくらい(笑)。5か条以外になりますが、クライアントの商品をとことん好きになり、提案でも撮影でも自分自身が何より楽しむ。これが一番大事にしていることかもしれません。時計一周の立ち仕事もよくありますが、帰宅して靴を脱ぎながらひっくり返って玄関で寝ちゃったことも(笑)。一つ一つの仕事に全力投球です」

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撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

網渕礼子

2012年江上料理学院にて正社員として勤務。助手業務を経て自身も講師経験を積む。在籍中に非常勤務講師に転向してフリーランスとしての仕事も開始、2019年同社を退社。現在はフリーランスで料理講師・フードコーディネーター ・スタイリストとして活動中。レシピやメニュー開発、フード撮影など活動は多岐に渡る。