
先生はどんな人?
道下欣子さんの教室名「サローネフェリーチェ」には“幸せ”という意味が込められています。料理に目覚めたきっかけは、小学生のときに家族のために作ったカレーだったそうです。
「母が自宅で仕事をしていたので、合間で料理を作ってくれていたんですが、ある日仕上げにカレールーを入れておいてと頼まれたんです。今考えると、カレールーを入れて混ぜただけなんですが(笑)、その日のカレーを家族がとても喜んでくれて、私も嬉しかったんです。それから毎週土曜日は私が料理当番になりました。料理をするたびに喜んでくれましたね。おかげで学校の調理実習では、手際がいいと褒められていました」
音大卒業後は、家業を手伝いながらも、ますます料理への思いが募っていったそうです。しかし、料理教室のオープンへの道のりは一筋縄ではいきませんでした。
「東京にル・コルドンブルーができた頃、単発講座に一度参加したら、料理への気持ちに火がついて、プロに習いたいと思うようになりました。ただ当時の日本は、今のようにプロから直接学べる場所があまりない状況。プロに学ぶには外国に行くしかない!と思い、とうとう25歳の頃に、1ヶ月のお休みをとって、イタリアに料理留学へ行きました。帰国後も、やっぱりコルドンに通いたい、という気持ちは高まるばかりでしたが、家業もあったし、そのうち結婚もして忙しくなり、さらには体調不良に…。やっとコルドンに通えたのは39歳のときでした。プロの仕事の何もかもが衝撃的で、充実感でいっぱいの日々でしたね。
卒業後は、まだ体調も万全ではなかったので、不定期で教室を開催していました。やっと体調も落ち着いたところで、教室を本格稼働させようと思っていた矢先、コロナ禍に。時間はかかりましたが、教室の運営を本格化することができて、嬉しい限りです。今月はおかげさまでレッスンはすべて満席をいただいております。今も、和食の料理教室に通っていますし、テーブルコーディネートも勉強中です」
常に自身のアップデートを怠らない道下さん。今後どんな目標があるのでしょうか?
「まずは、この空間を訪れた生徒さんには日常を忘れてもらって、楽しく、かつ学びのある時間を過ごしていただけるような教室にできたらと思っています。時短料理が求められる時代ですが、毎日ではなくても、丁寧に時間をかけて作ることの楽しさも知っていただければ嬉しいですね。フレンチはたしかに超簡単、というわけにはいきませんが、高い技術が必ずしも必要ではないんですよ。たとえば、ソースなら、バターは控えてヘルシーに、作りやすい簡単なソースを覚えてもらってアレンジできるようご紹介していきたいです。
また、体調不良だったときに出合った薬膳料理についても、お伝えしていきたいと思っています。薬膳を勉強したことで食に対する考え方が変わり、体調を整えることの大切さを知りました。フレンチがハレの日のような立ち位置なら、薬膳は日々の生活を整えるような体を労るお料理。どちらの魅力もお伝えしていければ嬉しいです」