
芳醇な香りと豊かな味わいに欠かせないのが、バニラビーンズと細かく刻んだトンカ豆。
作業は全て手作業です。「雇用を生み出したいから、オートメーション化は考えていません」と田村さん。
『Mr. CHEESECAKE』と名づけられた料理人発のチーズケーキは、瞬く間に人気になりました。「さすがに、インスタに乗せたから売れるとまでは思っていなかったです。せいぜい知り合いが買ってくれるところまでは想像できたんですが、インフルエンサーの方たちが発信してくれたこともあって認知度が高まり、ありがたいことに自分も食べてみたいと思ってくれる人がどんどん増えていったんです。あとはやはり、これまでの概念を覆す、まったく違ったアプローチのチーズケーキということも追い風になったと思います」
働いているのは20~40代の女性。「スタッフ募集はTwitterです。採用基準はまず人柄!技術うんぬんよりも、一緒に働いてハッピーになれる人が条件でした」と、人を大切にする田村さんらしい言葉です。
チーズケーキの売り上げが右肩上がりになり、2018年7月にはお店を辞めた田村さん。味や香り、食感に至るまで完璧に計算され尽くしたレシピには、こんな驚きの秘密もありました。「僕はとにかく無駄なことが嫌なので、作業工程をなるべく減らし、計量の手間を徹底的に省いて効率を上げることに徹したんです。クリームチーズって1kgと10kgがあるんですけど、量が多いから10kgの方が安いんですよ。コスト的にはそっちの方がいいけど、そこから3kg使うとなると計量する必要がある。でも人間だから計量ミスが起こる。これを1kgのものを3個用意して丸ごと使えば量らなくていいし、ミスもない。ほぼ全ての材料がこうなんです。コーンスターチとレモン汁だけは量りますが、2種類だけならまず大丈夫」
売り上げが伸びていく中で、問題も浮き彫りになってきたそうです。「この先どうやってさらなる拡大を図ればいいのか、ビジョンが描けなかったんです。何が事業のボトルネックになるのか、事業拡大に必要なものは何なのかは見えていませんでした。でも商品を作ること以上に大切なのが、マーケティングやPR。この状況を変えるべく、Twitterを通じて僕を知ってくれた人に共同経営者になってもらい、マーケティング領域を任せられるようになり、順調に売り上げを拡大することができました。おかげで、僕はモノ作りに専念できるようになりましたね」
「Twitterで田村さんのファンだった」、「働き方を変えたいという考え方に共感して」と、スタッフにも慕われている田村さん。