
レストランにとらわれない生き方と働き方改革
シェフでありながら、時代を一歩先見据えたビジネスセンスはどこで培ったのでしょうか?「僕が今まで働いていた店のシェフが、レストラン以外にも事業を手がけていたのが大きいと思います。例えば、メーカーの食のプロデュースをしたり、料理番組の仕事をしたり、デリカエッセンを運営したり。フランス時代に最初に働いたレストランでも、アルゼンチン出身の料理長が地元でハンバーガー屋を経営していましたね。そういうのをずっと見てきたので、僕の中でも、レストランをやりながら何をしようかなというのは思っていました。結局、レストランはやろうと思えばいつでもできるから、やめても良い仕組みを作ろうと思ってチーズケーキの物販に力を入れることにしました。店舗を持たずにチーズケーキをインターネット経由で販売すれば、売れた分だけ利益が出るし、従来のように朝から晩まで厨房で働く必要もありません」
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働き方という点からも、業界を変えていきたいと思っていたそうです。「レストランって結局、客数と客単価と営業日数で売上のラインがある程度決まってしまうので、利益を下げないようにするしかない。それで働いている人の給料を上げようとすると店の利益を減らすしかないし、そうすると新しいことに挑戦できなくなる。だから、いつまで経っても働いている人の給料は上がらないし、結果としてスタッフも短いスパンでやめてしまう。とくに女性は、結婚や出産など人生のライフステージが変わると、素晴らしい技術を持っていても働き方を変えることを余儀なくされることも多いですよね。本当に時代に合ってないと思うんですよ。結婚や出産でキャリアを諦めるのではなく、自分の手が空いた時に、お菓子教室をやったり自分の小さなブランドを持ったり、または商品のPRの仕事をしたりするのもいいと思うんです。レストランで長い時間働いて10年頑張ってみるのもいいけれど、そうじゃない選択肢もある、自分の店を持つだけがゴールじゃないんだということを体現していけたらなと思っています」
いずれは世界へ、そして新たなる夢も
今後はどんなビジョンを描いていらっしゃるのでしょうか?「クリアすべき課題はたくさんありますが、海外展開も目指しています。チーズケーキって普遍的なものだし、基本的に流行り廃りもない。日本発のチーズケーキを発信できたらいいですね。あとは、今はこの事業を伸ばすことに注力しているのでいつかはわかりませんが、もしレストランをやるとしたら、野菜と果物と魚介類のお店をやりたいですね。大皿で、みんなでシェアして、サクッと食べてサクッと帰るみたいなお店。僕ね、フランスから帰ってきて1年半くらいで30都道府県回ったんですけど、良い食材があまり世に出ていない現状など、第一次産業の課題が見えてきました。そういう方たちが作っている野菜や果物を集めて、それを提供する場を作りたいんです。あとは、地方で3~4室のこぢんまりしたオーベルジュとかもいいですね。昼間はみんなで野菜なんかを収穫して、夜はその素材を使った料理を提供してみんなで囲んで食べるのも楽しそうですよね。まぁ、これは時間の余裕ができてやりたくなったらやればいいかなと思っています」