包丁マイスター直伝! 料理の腕が上がる包丁砥ぎ講座【Kai House Clubイベントルポ】

「Kai House Club」が会員の皆様に向けて定期開催している、食にまつわる特別セミナー。今回は、初代包丁マイスターであり、貝印社員として包丁マイスターの育成や国内外で包丁砥ぎ講師などを務める林泰彦さんに学ぶ「包丁砥ぎ講座」をリポートします。

2019年06月20日

包丁の砥ぎ方ひとつで、見た目も味も変わる!

どんな職人でも道具を大切に扱うことはプロとして必須の心構えといえますが、料理における包丁というのは、料理家の皆さんにとっては“手”そのものといってもいいほど、重要なアイテム。切れ味の違いは、食材の見た目の仕上がりの違いや生徒の前で調理プレゼンを行う際の効果、ひいては作業効率にも影響することは想像に難くありませんが、さらに、味や料理の見た目までも変わってくるというから注意したいものです。現に、慶應義塾大学理工学部から誕生したというベンチャー企業「AISSY」が実施した調査では、切れ味の悪い包丁で切ることで、ピーマンは苦みや酸味がアップし、トマトは旨みや甘みが損なわれるという結果が報告されています。

そこで今回、「Kai House Club」では会員の料理家に向けて「包丁砥ぎ講座」を企画。貝印の社員であり、初代包丁マイスターとして後進の育成に努めるとともに、国内外でも活躍を続ける“包丁達人”の林泰彦さんに、座学での講義とデモンストレーション、そして実際に一人一人が包丁を砥ぎ、林さんから指導を受けるという実習の3パートで、一日で包丁砥ぎの上級者になれる贅沢なレッスンが行われました。

今回の参加者は全員、プロフェッショナルの料理家。しかし「包丁砥ぎには自信があります」という人は少数派です。日頃は簡易な包丁シャープナーを使っているという人、包丁砥ぎのプロに任せているという人、自分で砥いでいるけれど本当にこれでいいのか自信がなかったという人など、タイプはさまざまです。かつて林さんの包丁砥ぎ講習を受けたことがあるけれど、復習とアップデートのために改めて参加したという熱心な方もいました。

一見強面(こわもて)、けれど温かなホスピタリティーとユーモアに溢れる林さんの講義には、笑ったりうなずいたりしながら、参加者の皆さんは終始夢中で聞き入っていました。

まずは多彩な素材がある包丁の種類について学びます。包丁というと多くの人はその素材は鉄、鋼(はがね)、ステンレスを思い浮かべるのではないでしょうか。実は「鉄」は単体だと柔らかすぎ、刃物にするには不向き。鋼は硬くて強いけれど錆びやすい、ステンレスは硬くて錆びにくいけれど市場に流通しているものの品質差が大きいので買う時には注意が必要、など、刃物には実は、覚えておくべきさまざまな特徴があります。さらに刃物のクオリティを決める3要素として、“素材”“焼き入れ”“刃付け”があり、それらの組み合わせで価格が決まる、というレクチャーがありました。包丁の種類と用途について詳しい解説がなされたあと、林さんが砥いだ包丁と、そうでない包丁を使って、参加者全員が野菜を切り比べます。

もちろん工場仕上げの包丁もよく切れるのですが、林さんが丁寧に砥ぎ上げた包丁の切れ味といったら、まったく食材の抵抗を感じないといってもいいほど! 「切り口のみずみずしさが違う」「噛んだときの音が違う」と、一同、切り心地だけではない違いにも驚きます。「私は玉ねぎを切っても涙が出たことがないんですよ」と林さん。

ここで休憩時間。参加者の皆さんは、展示されていた用途別のさまざまな包丁に触れたり、もう一度砥ぎたての包丁の切れ味を確かめたり、気になっていたことを林さんに質問したりと、包丁への関心が一気に高まったようです。

第2部では、実際に林さんが包丁を砥ぎながら、砥ぎ方をレクチャーします。包丁によって刃の付け方が異なり、砥ぎ方も違ってくるため、今回は両刃の洋包丁で紹介。研ぐ前に砥ぎ石を15分くらい水に浸けておくことや、刃を石に当てる角度は15°ほどに保つのが理想的で、両刃の包丁であれば両面合わせて30°、女性の小指の第一関節くらい挟んだ角度で安定させること、また砥ぎ石は真ん中がえぐれたり折り返しによる角度のブレを少なくするために、縦の幅いっぱいまで使って砥ぐことなど、細かいポイントを丁寧に紹介。

「押すときも引くときも力を入れず、ゆっくりでいいので正確に砥ぐことを意識してください」と林さん。

片面が砥ぎ終わったかなと思ったらもう一方の面に移りますが、そのとき砥いだことによって出る「バリ」「まくれ」「刃返り」などと呼ばれる、砥ぎカスのようなものがきちんと出ているかを指先で撫でながら確認するのも重要なポイントだそう。レクチャーは和やかに続けられます。

先端や手前の角の砥ぎ方もアドバイスした後、裏返してもう片面も「バリ」が出るまで砥ぎます。

「研ぎ石の上のドロドロは砥ぐ助けになるので水に流したりせず、乾いてきたら数滴、水を垂らしましょう」。

両面を研ぎ終わったら、“バリ”をきれいに取り除いて終了です。

「古新聞などでこそげ落とすことが大事です。朝刊1冊分くらいの厚さがあるといいですね。新聞がない場合は、漫画雑誌や着なくなったデニムの片足分くらいの厚さで砥ぐといいでしょう。柔らかい素材がおすすめです」

最後に実習タイムです。先ほど林さんが目の前で実演してくれた包丁砥ぎですが、いざ自分でやってみるとなかなか難しいもの。「角度がブレていないか、自分でよく感じてくださいね」「スピードより丁寧さが大事ですよ」などと一人一人にアドバイスし、指先で確認しながら砥ぎ加減をチェックして歩きます。林さんが来ると「自信がないです!」とヘルプサインを発信する人、よく砥げていると褒められて歓声を上げる方など、参加者は一様にたいへんな盛り上がりよう。最後におまけとして、片刃の和包丁の砥ぎ方も説明してくれました。

参加した皆さんは「今までこれでいいのかなと思いながらも自己流でやってきたのですが、正解がわかって安心しました」「過去に習ったことがあったけれど、忘れていたことや苦手だったことが確認できてよかったです」と、満足度の高いイベントになったようです。参加できなかった皆さんも、正しい砥ぎ方を身につければ、料理の腕が上がること間違いなしです。これまでの砥ぎ方を一度見直すためにも、次回の開催が待たれます。

「Kai House Club」会員限定セミナーでは、今後もすぐに役立つ実践的な企画を続々と計画中。料理教室を営んだり料理家として仕事をしていく上で必要な様々な情報や体験を、価値あるイベントやセミナーを通じてお届けしていきます。

撮影/山下みどり 取材・文/吉野ユリ子

講師紹介

林泰彦(ハヤシヤスヒコ)さん

包丁シニアマイスター。初代包丁マイスター。小学校2年生の時から包丁を研ぎ始め、包丁研ぎ歴約50年というキャリアの持ち主。現在は貝印社員であり、包丁シニアマイスターとして社内の包丁マイスターの育成に携わるとともに、国内はもとより海外でも包丁研ぎのセミナーやデモンストレーションに登壇、Twitterでは約5.8万人の視聴者を獲得するなど、包丁研ぎ界の巨匠として活躍中。


 

 

 

Information

「Kai House Club(カイハウスクラブ)」

正式名称は「Kai House Culinary Artist Club(カイハウス・カリナリーアーティスト・クラブ)」。貝印が運営する“料理家のコンシェルジュ”をコンセプトとしたメンバーズクラブ。さまざまな特典があり、今回ご紹介の「Kai House Club」主催のイベントやセミナーへの参加など、料理家に役立つ情報や経験が満載。入会資格は「現在、定期的に料理教室を主宰していること」。

 

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