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「宣伝会議」編集長に聞く HP作成 

スキルアップ
2018年08月6日

フリーランスとして働くスタイルを選んだ時、きっと一度は考えてみたことのある課題、「ホームページって必要?」について考える今回。SNSなど、簡単に発信できる個人メディアが増えた今、果たして本当に必要なのでしょうか。また、ホームページ開設時のポイントや活用方法とは? そこで、雑誌「宣伝会議」の編集長、谷口優さんにお話を伺いました。「毎日更新しているけれどこれで効果が出ているのか不安」という方や、「基本フォームは作ったけれど開店休業状態」という方、最初の一歩を踏み出すために必読です!

“安心感”を制作する、個人ホームページの存在意味

この「料理家のためのデジタル塾」連載では、これまでTwitterやFacebook、InstagramといったSNSの活用法を紹介してきました。しかし、他にもLINEなどに代表されるように、即時性が高くインタラクティブな情報発信ツールがあふれている今、改めて個人がホームページ(以下HP)を作るメリットはあるのでしょうか。宣伝やプロモーション、販売促進、ブランディングなどの最新情報や発想のアイデアを紹介する月刊誌「宣伝会議」の編集長であり、多くの企業やブランドのHP運営にも精通している谷口優さんはその必要性や作成のコツについて、次のように語ってくれました。
「昨今、情報発信だけが目的であれば、それを満たしてくれるソーシャルメディアはたくさんあります。が、東日本大震災以降、“信頼のおける情報源で確認したい”という人々の思いは強くなっているように思います。その点においてHPはデジタル上の基点であり、母艦のような存在といえるのではないでしょうか。料理教室を中心に主宰する料理家の方であれば、マンションの一室で運営していたり、スクールに出張講師として出向いていたりする方が多く、店舗や企業のように看板を出して専用の場を構えている方は少ないのではないかと思います。そうなったとき、ソーシャルネットワークのようなフロー型の情報と違って、HPがあれば、その方の教室や料理に興味を持ってくれた“見込み客”にとっては、重要な安心材料になることでしょう。これはあくまでイメージ的なものですが、昔で言えば“テレビCMをやっている会社だから安心”と人々が考えた感覚に近いと思います。料理教室の生徒だけでなく、出版社の方や食材メーカーの方など、“B to B”の場で出会うビジネス相手にとっても、SNSで情報発信をしている人と比較された場合には、HPを持っているというだけで信頼性が高まり、ビジネスパートナーとして選ばれやすくなるということはあるでしょう」
谷口優さん

ホームページ作成のコツ① 差別化ポイントを明確にして売り上げUP!

とはいえ、「信頼される確率が上がるというだけで、HPさえ開設すれば次々に仕事が舞い込んでくるほど甘い時代ではありません」と谷口さん。HPを開くというのは、いわば店をオープンしたのと同じこと。当然、そのお店まで、どうやってお客さまを連れてくのるかという戦略なくしては”繁盛店”にはなりえないというのです。
「特に重要なのは“差別化ポイント”を明確にすることです。人でも店でも企業でも、ブランド価値というのは他者との差異から生まれます。例えば、知り合いを食事に誘うときのことを考えてみてください。味も雰囲気もサービスも価格も合格点。でも、なんか際立った特徴がないな…というレストランは、候補にあがりづらいのではないでしょうか?皆さんもいち消費者の立場にあるときは、何かしらエッジのあるものを求めるはず。そして、このエッジがHPにお客さまを連れてくるうえで重要なポイントになります。あなたの教室にはどんな特性があるでしょうか? 野菜料理×子供レシピ、ワインに合う和食、など、細分化された他者に負けない魅力があり、なおかつ自分自身のアピールポイントを明確にしないと、そのためにはどんなHPが効果的かということも決めようがないのです」。
「デジタル上では、ライバルは全世界にいる」と谷口さん。「全国の料理を食べ歩いているという人なら、ブログ形式でテキスト量を多く見せていくHPの方が需要があるでしょうし、テーブルスタイリングが売りなら、写真を中心にしたビジュアルの際立つサイト構成が喜ばれるでしょう。料理家として自分が他の人と何が違うのかをまず見極めると、どのようなHPにすればよいのか、デザインやコンテンツのイメージ、さらには必要な機能も明確になってくるのではないでしょうか」

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撮影/田村浩章 取材・文/吉野ユリ子

話を聞いた人 谷口優さん(Yu Taniguchi)
宣伝会議 出版・編集事業取締役、月刊「宣伝会議」編集長/社会情報大学院大学 准教授。2000年早稲田大学卒業後、宣伝会議に入社し、月刊『宣伝会議』編集部配属に。月刊『環境ビジネス』・月刊『編集会議』編集長、月刊『宣伝会議』副編集長を経て、2007年10月より編集長。