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ツイッターでの出会いから処女作出版へ

インタビュー
2019年04月9日

今月から始まる新連載。人気の料理家に、キャリアの礎(いしづえ)となった料理本が出版されるに至るまでの経緯や裏話をたっぷりとお聞きします。トップバッターは、料理家の山脇りこさん。東京・代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰し、著書は現在17冊。その他にも翻訳本や海外向け電子書籍、コンビニ向けに再編集された本などもあります。そしてさまざまなメディアやイベント出演が引きも切らず。華やかなイメージの今をときめく人気料理家です。実は山脇さんの料理家デビューは遅く、本格的に教室を始めたのは40歳の終わり、はじめての著書が出たのは45歳の時。では、その第一歩となった処女作はどのように生まれたのでしょうか。

レシピ付きエッセイ、4コマ漫画、動画などに挑戦

初の著書を2011年に出版してからは毎年、新しい本を手がけている山脇さん。2016年に出版した『明日から、料理上手』(小学館)は読みもので、新しい試みと言えるものでした。

 
この本では本文のみならず、写真キャプションや紹介している調味料の商品説明に至るまでのすべてを山脇さん自身が書きました。山脇さんが料理の仕事に就くまでのことや、子供の頃の旅館での体験、調味料の蔵や生産者を回っての経験もつづられています。またたくさんのレシピを作るより、料理のコツがたくさん詰まった基本となる10皿を繰り返し作ったほうが料理上手になる、という考え方もここではっきりと形にしたと言います。
「レシピをいわば量産するような仕事をしながら矛盾しているのですが、私の中にずっと、家庭料理でそんなにたくさんのレパートリーはいらないよ、という思いがあるんです。買い物で目にした美味しそうな旬の食材や、その日、お値打ちの食材で、家族が好きなものがちゃちゃっと作れるのがいいと思うので。それには、10皿くらいの基本的な料理を、どうしてそうするかを理解して作れるようになるのが、早道かな、と思うんです」
「基本の10皿を繰り返し作る」という提案は、2018年には『きょうから、料理上手』(家の光協会)という本になりました。「10皿に100皿の料理に通じるコツがつまっている」とあるように、「おいしい!のコツ」は大きな文字で箇条書きにして見せ、最初の見開きには4コマ漫画も加えました。さらに3つの料理動画もQRコードで読み込むことができるという新しい試みも。

 
「本作りには大きなエネルギーと、愛が欠かせません。なにより、ひとりではできない。編集者さん、カメラマンさん、デザイナーさん、みんなのパワーがかけ算になってこそ、楽しい。何冊つくっても、慣れることもないし、上手にもならないし、悩むことも多いです。でもだからこそ、ワクワクするなーと。去年からご縁あって、台湾での仕事が増えたのですが、これも本が台湾で翻訳出版されたのがきっかけです。この5、6年の紙の本をめぐる変化は凄まじいので、なかなか単純じゃないとおもいますが、本が生まれることで広がる面白いことってやっぱりたくさんあると感じています。ますます面白いことが始まるように、いまこそ、既視感のない本をつくりたいなーなんて思っています」

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撮影/山下みどり

プロフィール
山脇りこさん
料理家。東京・代官山で料理教室「リコズキッチン」主宰。長崎市の日本旅館に生まれ、季節を感じる食材や料理に囲まれて育つ。2008年から1年間N.Y.で暮らしたことをきっかけに、料理の仕事にシフトし、料理教室をスタート。2010年にリコズキッチンをオープン。2011年8月に1冊目の著書となる『もてなしごはんのネタ帖』(講談社)を上梓、以来、ほぼ毎年著書を出版。最新刊は『きょうから、料理上手』(家の光協会)。2019年春も新刊の準備中。
 
はじめての著書
『もてなしごはんのネタ帖』
2011年8月23日発売
講談社、1296円(税込)
B5判、平綴じ、80ページ
調理・撮影・スタイリング/山脇りこ