特集記事

ラッセ 村山太一さん

インタビュー
2020年07月30日
料理人をはじめ、料理にまつわるスタイリストやフードコーディネーター、カメラマンなど、食を支えるクリエイターのインタビューをお届けする連載。料理への向き合い方、仕事観、読者のスキルアップのためのノウハウなど、食を支え、未来を描こうとする様々な職種の方々の料理に対する考えや思いを伺います。

社員たちが自ら仕組みを考え、保健所の許可取得に動き、通販サイトの制作も同時に進めた外販事業は、初月から黒字事業化させました。

「困難な時代でもお客様に寄り添いたいという気持ちが生んだ『ラッセのラビオリ』から始まった事業は、レストランの利益を上回る計画を立てています。レストラン、外販事業、テイクアウト、食の社会インフラとして価格帯を変えてもラッセクオリティを全力で上げています。一つの実店舗で、レストランの経営と店舗の運営の責任の所在をはっきりと分けることで、若いスタッフたちが本来持っている能力をより発揮しています」

一方で、店舗も感染予防対策を十分にとって営業を続けています。ラッセのレギュレーションは、村山さんのnote(今後の飲食業界スタンダード、レストランラッセ取扱説明書)やラッセのFacebookページで発表されました。さらに、レストラン側の感染対策だけでなく、来店するゲストにも来店日の朝に体温を測ることを徹底してもらっています。さらに入店時には、アルコール消毒と「パルスオキシメーター」による血中酸素の測定といった対策を両者が行うことで、安心して食事ができる空間づくりを目指しました。

パルスオキシメーターは、新型コロナウイルスに感染した軽症者の経過観察に使われる血中酸素の測定器。新型コロナウイルスの感染判断はできませんが、病状の重症度の判断には有効とされています。

安心・安全が信頼の大前提になる

コロナ禍では、飲食店が感染源のように報じられたこともありました。それで『飲食店は怖い』というイメージがついてしまったんです。

「僕自身が実は肺炎、気管支炎、喘息という基礎疾患をもっていたこともあって、感染防止対策は理詰めでしっかりとやりました。僕たちのようにしっかり感染対策をしていれば、人混みよりレストランの方が感染するリスクは低い。実際、高価格帯のレストランでクラスターは発生していません」

恐怖や不安に対して、正確な情報収集と分析をすることで、いかに人の気持ちを解かしていくか。店内の感染防止対策についてお客様に理解を促すことや外販事業といった取り組みは、顧客が店の評価を決めるというサイゼリヤの理念に基づき学んだことでもあります。

「ウィズコロナ・アフターコロナの世界では、心と心のコミュニケーションが絶対に必要になると思います。それは、信頼関係ともいえると思います。コロナ対策においては、現実的な数値をきっちりと把握することで、感染しない・感染させないコミュニケーションによって信頼関係ができあがっていくはずです」

そういった「新しい生活様式」における信頼関係の築き方は、レストランだけではなく、飲食のイベントや料理教室などでも同じことではないかと、村山さんは言います。

「新型コロナウイルス感染対策のことだけでなく、腸炎ビブリオや大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターといった食中毒の原因になる菌が1時間や3時間後にどうなるのかなどをしっかりと把握しておく。食を扱うすべての人たちにとって、安全性は、調理以前に必要な前提条件になります。その次に、料理を提供したり、料理を教えていくことになるのではないでしょうか。私たちは、安心・安全に対する正確な知識を持ってお客様をお迎えすることが大切になるのではないかと思います」

「これからデジタルシフトしていけない業界は生き残れません。レストランも同じ。今はYouTubeを開設するため、動画を撮り溜めているところです」と村山さん。実家が写真館である村山さんは、元々カメラや動画編集などをを行っていた経験もあるそうです。

 

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撮影/大平正美 取材・文/江六前一郎

 

「ラッセ」オーナーシェフ・村山太一さん

1975年、新潟県生まれ。京都、料亭にて茶懐石の修業し、2000年イタリアに渡る。ミシュラン・ガイド二つ星の2店を経験した後、三つ星「ダル・ペスカトーレ」に入店。後に副料理長に就任。2011年に「ラッセ」を開き独立した。2012年版ミシュラン・ガイドで一つ星を獲得して以来、星を保持し続けている。
初の著書なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトをするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法(飛鳥新社)2020年8月19日出版予定

ラッセ

住所: 東京都目黒区目黒1-4-15 ヴェローナ目黒B1
電話番号:03-6417-9250
営業時間:12:00~14:00(13:00L.O.)
17:30~22:00(20:00L.O.)
定休日:日曜日、不定で月曜日
http://lasse.jp/