特集記事

料理開拓人 堀田裕介さん

インタビュー
2020年08月4日
料理人をはじめ、料理にまつわるスタイリストやフードコーディネーター、カメラマンなど、食を支えるクリエイターのインタビューをお届けする連載。料理への向き合い方、仕事観、読者のスキルアップのためのノウハウなど、食を支え、未来を描こうとする様々な職種の方々の料理に対する考えや思いを伺います。

料理や食材は、命を繋ぐことに直結している

「都市と地域の架け橋として、生産者と生活者を繋ぐ」ことを目指す堀田さんにとって、Grow Rice Projectの設立は、かねてからのマイルストーン(大きな節目)でした。そして、ケータリングのブランド「foodscape!」を立ち上げて10年目の節目になる年だった2020年。しかし、新型コロナウィルスという目に見えない敵の出現に堀田さんも苦しめられます。

「『森、道、市場 2020』のようにオンラインに変更したイベントもありますが、ケータリングは、ほぼすべて中止。それでも『森、道、市場 2020』で配信した動画を見て興味を持ってくださった企業と映像のプロジェクトを新しく進めることにもなって、今までになかったオンラインのニーズが高まっているように感じます」

「SNSやインターネットの世界にいないと、忘れられた存在になってしまうから」と、堀田さん自身も、コロナ禍でイベントができない間に自身のYouTubeチャンネルを開設。撮影・編集を自分自身で行った料理動画をアップしています。Grow rice projectが運営する中華粥専門店の「Rice meals FoTan」(大阪・豊中市)では、食品衛生の許可を取得して冷凍での通信販売も始めました。

「今まで通りのことをしてコロナが過ぎ去るのを待っていても、昔には戻らないと思っています。例えば普段料理教室を運営されている料理家の方は、料理の瓶詰めを販売したり、教室一本での運営にならないように、少しでもリスクを分散するようなことを始めてもいいと思います。今は、新しい生活様式に即した料理家としての活動の在り方を戦略的に考えていくべき。そして、やはり待っているだけでなく、SNSを強化したり、Youtubeチャンネルを開設して発信するなど、常に発信を続けていくことも大切だと思います」

一方で、新型コロナウィルスとの向き合い方を、料理を作る側から提案していくこともしていきたいと堀田さんは言います。

「コロナ禍で、除菌や殺菌が正義になってしまいました。しかし、僕は日本中を旅しながら各地の食文化を見てきて、改めて感じているのは『無菌』というのは、人間生活ではありえないことであり、かえって命を脅かすのではないかということです」

一年間の半分が雪に覆われて農業ができない地域の漬物は、乳酸菌によって生み出されます。日本酒や味噌といったものも、酵母の働きによって造られるもの。菌と共存しながら、その地域の人たちが命を繋いでいくために必要としたものが食文化と呼ばれるものなのです。

「これからの新しい生活様式では、暮らしの中でコロナから身を守る必要があります。それには食べることで免疫力を上げたり、疲労を回復したりすることも含まれると思います。命を繋ぐことに料理や食材が直結しているんだよということを、私たちのような”料理を作る側”から伝えられたらと思っています」

YouTube開設を記念して、友人のデザイナーがロゴを制作してくれました。

 

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撮影/大平正美 取材・文/江六前一郎

堀田裕介さん
1977年、大阪府出身。20代の頃から大阪でイベントやデザインを手掛ける「graf」で料理人として勤める。31歳で独立すると2010年には「foodscape!」を立ち上げ、瀬戸内国際芸術祭にも出店するなど、ケータリングを中心に活動する。同時に、食と音楽のイベント「EATBEAT!」で全国を回る。2018年に一般社団法人Grow Rice Projectを設立し活動の幅をさらに広げている。

Instagram https://www.instagram.com/yusuke_hotta/

Youtube channel www.youtube.com/user/ysksssc

foodscape! https://food-scape.com

Grow Rice Project https://www.instagram.com/growrice/