
通常は、淡泊な味わいの白身魚などのネタを最初に出すことが多いですが、ここでの握り一品目は「中トロ」。お任せではなくコース仕立てで、先にお料理を何品か味わった後だから、程よい脂と旨味のインパクトがあるネタから始めたいという想いゆえの演出です。
江戸前寿司で人気のネタと言えば穴子。でも、遠藤さんはスペシャリテに「うなぎ」を据えています。しっとりジューシーに煮た後に炙り、たれで頂きます。「川魚は握りにしないといわれているけれど、うなぎは海で生まれている。だったら握ってもいいじゃないかと思って取り入れています(笑)」。
締めの一品は、トロタクの手巻き。折詰のお土産ではなく、出来立てが味わえるカウンター席だからこそ、海苔はパリパリの状態で供したいとの考えから、巻きすを使用せず手巻きで提供します。
先人たちが積み重ねてきた寿司というジャンルに敬意を払いつつ、常に「どうしてそれじゃいけないの?」という“Why not?”精神を持つ遠藤さん。彼が目指す、変化ではなく進化した寿司は、常に最旬の感動を与えてくれるに違いありません。