二人は月に一度、店の定休日である日曜に、中野にある新井薬師で開かれる骨董市に通ったり、旅先ではその街の骨董屋などに立ち寄るなどして、調理器具やカトラリー、器などを買い集めています。来年2月にはフランスを旅する予定で、各地のアンティークマーケットに立ち寄るのを楽しみにしているそうです。
「FRANZを始めたとき、好きなものに囲まれたレストランにしたいという思いがありました。少しずつ自分の好きなものが増えていくのは楽しいんです」と、9月に行った金沢で購入した赤玉瓔珞文の器を手に、福田さんは微笑みます。
福田さん夫妻が、最近手に入れた骨董品の一部。右上が、金沢の骨董屋「きりゅう」で購入した赤玉瓔珞文の器。ほか3点は、新井薬師の骨董市で購入しました。
仕込みを朝早くからしたり、新しいメニューを考えたりすることが今も楽しいという福田さん。
「今はまっているのはコースの中で出すパン作りです。パンは、水と小麦粉と塩の配分で、どんな形にもなるのがおもしろいです。発酵もいろいろ試してみて、その答えが翌日にわかって、それが実験みたいで。プラモデル作りにはまっている子供のように、夢の中でもパンを作っています」と笑います。
料理を好きでい続けられるのはなぜでしょうか?
「最初のうちは、料理をやらせてもらえなかったりして辞めようかなと思うこともありました。でも辛抱してやり続けて、ひと通りのことができるようになると、そこから楽しくなってきます。やり続けるのは難しいのですが、僕にはやり続けられる環境があったので、こうやって料理に没頭できる自分を作ってくれたのだと思います」
妻の麻子さんや、これまでの恩人たちの存在が、福田さんの今を支えているのです。
肉料理の付け合わせで使ったパースニップ。当日使う食材は、アンティークの器にのせてカウンターから見えるようにしています。
右からシャインマスカットとシードルヴィネガーのシロップ、黒イチジクのバルサミコ漬け、洋ナシ酵母液、リンゴ酵母液。酵母液はパン作りに使います。
福田さん夫妻の好きなもので埋め尽くされたFRANZは、まるで二人の自宅に招かれたような親密でやすらげる空間になっています。