
「牛肉のピッツァ職人風 チコリエッラのソテー添え」。ピッツァで名高いナポリを州都に持つカンパーニア州らしく、トマトソースとともに。オレガノとニンニクでシンプルに焼き上げた牛肉に、苦みのあるチコリエッラとハムや香味野菜で煮込んだレンズ豆をプラスした、素朴な味わいです。
郷土料理が多彩であるのと同様に、各地の気候風土を反映した土着品種のブドウから個性豊かなワインが生まれます。「オステリア・デッロ・スクード」では、シーズンごとにワインのセレクトも各地方のものを揃えています。嗜好品ではなく、食文化の一部であるワインと料理のダイナミックな相性が味わえるのも楽しみです。
イタリアの情景が浮かぶ一皿で郷土料理の背景にある歴史やと伝統を伝える
中学生時代にはすでに、料理人を志していたという小池教之シェフ。なかでも、イタリア郷土料理に強く惹かれたのは、背景にある歴史や文化への興味だったといいます。「世界史やローマ史が好きだったことがきっかけ。華やかなイメージが浸透している世界的なリゾート地や美食都市も多いけれど、基本的にイタリア料理って色合いが茶色くて地味で素朴なものが多い(笑)。でも、それが誕生した背景には、多様性のある気候風土や歴史があります。『インカント』時代で“幅広く”紹介することができた実績があるので、自分の店では“より深く掘り下げる”ことを目指しています」。そもそも、イタリア料理はマンマの味である家庭料理が基本。受け継がれてきた伝統をどう伝えるかを考えながら、プロとして培った経験や技術のすべてを惜しみなく注ぎ込み、精度を高める。そんな熱いイタリア愛を持つシェフが繰り出す渾身の一皿一皿を通して、味わいだけでない情景や奥深い郷土料理の世界をぜひ体験してみてください。