
コースの前半に提供されるお椀、「松葉蟹とふかひれの真薯(しんじょ)」。旬の蟹とふかひれで作ったふわふわの真薯に、季節の山菜を添えて。だしのうま味はもちろん、蟹とふかひれの繊維質を組み合わせた真薯の食感も、楽しんでいただきたい一品です。
揚物は、「白魚とからすみ」。カラッと揚げた季節の宍道湖の白魚に、塩の代わりとしてからすみを振りかけています。「味の相性と、黄色いからすみの春らしさを意識しました」
最後に、山本さんの料理哲学を伺いました。
「僕自身がその時期に、絶対的に食べたいものを出すと決めています。コースで品数もありますが、惰性で作ったり、多くの人に平均的に好まれたりする料理は提供しません。そういう自分の味に合うお客様が、来てくださっているのだと思います。ただし、和食はこうと縛られすぎると料理がつまらなくなるので、行きすぎないように心掛けています。休みの日は食べ歩きをしていて、ジャンルを問わずおいしいものはおいしい。中国の食材というイメージがあるふかひれも食感がいいから使いますし、もともと日本にも古くからありました。またポルチーニも、ヤマドリタケモドキという近種が国内で採れますし、料理に垣根はありません。そういう自由な解釈で、自分なりの味を作っていきたいですね」