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魚の匠・岡村光晃シェフに学ぶ魚料理

イベント
2019年11月21日

「Kai House Club」の会員になると、料理教室主宰者にとって役に立つ特典が、数々用意されています。なかでも支持されているのは、貝印本社(東京都千代田区)内にある「Kai House(カイハウス)」で行われる会員限定の特別セミナー。毎回大人気のセミナーですが、今回お迎えしたのは麻布十番にある「トラットリア ケ パッキア」の料理長の岡村光晃シェフ。今回は“魚”という素材を取り上げ、魚の匠(マエストロ)としても名高い岡村シェフから魚料理の真髄を学びます。

もともと日本で冷蔵庫がない時代、魚を保存するために行っていた酢じめの処理は現代では「魚を美味しくする」ための技法だと岡村シェフは考えていると言います。
魚を洗った後は酢でしめる手順に移ります。三枚におろした魚を平バット(粗塩を引いたもの)に並べて、その上から塩をまぶす。「雪が降るようにかけるのがポイント。夏場は酸味、塩分が多いと美味しいと感じるので長めに置きます。30分くらいでしょうか」。塩が入りすぎるのを防ぐために“あら塩”を使うのも大切だと岡村シェフ。

ちなみに酢でしめる場合、使うのは脂がのった鮮度のいい魚。いい魚を使い手当をすることで料理はさらに美味しくなるとコツを紹介。さらにコハダにうま味を足すために、すし屋の「つめ」と呼ばれるたれを上に塗る技を披露しました。日本酒3、しょうゆ3、みりん1の割合の調味料を混ぜ、アルコールを飛ばすために火を入れます。「ぐつぐつと沸いてきたら、火からあげるのがコツ」と岡村シェフ。アルコールをしっかりと飛ばしておかないと中途半端な味になるため、このプロセスも丁寧に行ってほしいと説明。会場には香ばしいしょうゆと甘いみりん、そしてかすかなアルコールの香りが漂います。



つめを塗り、丁寧な仕事が施された後、美しい彩りの野菜のマリネを添えました。丁寧な和の技能にこだわった岡村シェフの世界でしか味わえないイタリア料理の完成です。
完成した料理をスマートフォンで真剣な表情で撮影する会員のみなさん。質問内容も奥深く、真髄に迫りたいという意気込みとその熱心さが伝わってきます。

貧しい土地だったシチリアのごちそう「いかの詰め物 シチリア風」

「いかの詰め物 シチリア風」はシェフがシチリアで学んだ料理。貧しい土地だったシチリアでは、さまざまな具材を詰め込んだこの料理は特別なお祝いの席でしかいただけないご馳走でした。このメニューはいかの中にたくさんの具材が入っているのを楽しめます。詰め物の中身でピスタチオはアーモンド、プロボローネというチーズがなければ硬いチーズ、ケッパーは塩漬けでも酢漬けでもOK、モルタデッラは魚肉ソーセージで代用できるので、それほど堅くるしく考えなくてもいいとのこと。

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撮影/名和真紀子 取材・文/松葉紀子

<プロフィール>

岡村光晃さん。1974年静岡県生まれ。洋食店等での経験ののち、本格的にイタリア料理を始めたのは26歳。姉妹店「ピアットスズキ」のオーナーシェフ鈴木弥平氏のもとでイタリアンの基礎を学び、2009年より現在の「トラットリア ケ パッキア」の料理長となる。2012年11月、フジテレビ「アイアンシェフ」に出演。フレンチのアイアンシェフ・須賀洋介氏にキノコ料理で挑む。「基本があってその上に基本がある」をモットーにお客様と向き合う毎日。お店はイタリア中部に位置する、トスカーナ州の田舎の家庭をイメージした内装。お客様がくつろげる空間と、アットホームなおもてなしを大事にしている。「モダンなものより、普通のイタリア人が食べて育ったような定番」をテーマに、「力強い」且つ「繊細」な料理を提供している「超・正統派」トラットリア。