特集記事

海外でも人気のインスタ投稿術

スキルアップ
2020年03月5日
まるで海外のレシピ本を見ているかのような洗練されたフードインスタグラムを届ける、フードフォトグラファーのELさん。センスのいい写真はため息ものの美しさで、世界中にフォロワーを持ちます。センスあふれる写真の撮り方の秘密や世界観を構築する方法を教えていただきます。

自然光を味方につけた撮影方法

自然光がたっぷりと降り注ぐ自宅兼スタジオで、普段のシューティングをしているというELさん。
「インスタにアップしている写真も、スマホではなく一眼レフで撮影しています。全部RAWで撮影してライトルームで加工していますが、少しムーディな雰囲気の写真が好きなので、全体のトーンを揃えるためにもあらかじめ自分のプリセットを作っています。自分の世界観を出すうえで、トーンを統一することは大切ですね」

父親がカメラ好きで、小さい頃からカメラを触っていたというELさん。初任給で買ったものはカメラだったそう。父の影響で自然とニコン派に。

 

「写真は逆光で撮っています。逆光だと影と奥行きが出て、光沢感も出せるんですよね。料理によっては、よりシズル感が出るし、美味しそうに見えます。我が家は自然光が注いでくれるので撮影しやすい環境ではあるんですが、光の調整にはバーチカルブラインドが便利です。羽を調節すれば、光を細く当てたり、スポットだけ明るくしたりと光の分量が自在に操れるので、狙った雰囲気で撮影することができます」

ELさんらしいクールでスタイリッシュな世界観を演出するためには、手作りの撮影ボードが欠かせないと言います。
「私自身、ベルリンのアーティストが撮る、ちょっと薄暗い感じなんだけど光が安定して入っているムードの写真がすごく好きなんです。その雰囲気に近づけるように撮影しているんですが、黒やグレーの撮影ボードが役立っています。朝の光なら白のボードが映えるんですが、私は午後から夕方にかけて撮影しているので、黒やグレーが最適です。ちょっとオレンジがかった午後の光で白のボードを使って撮影すると、全体的に黄色っぽい雰囲気になってしまうんです。その点、青を混ぜて作るグレーだと黄色みが抑えられて、寒色系のクールな雰囲気に仕上がります。また、黒は光を選ばないので、時間帯を問わないし、和も洋もオールマイティにこなしてくれます」

板を自分で購入してペンキで塗った手作りのボード。ベースの色を塗ったあと、メラミンスポンジを手でちぎったもので、無造作に叩きながらニュアンスをつけていくのがこだわり。30分もあれば完成するという。

 

一眼レフでの撮影となると、手ブレを避けるためにも三脚を使って撮影するプロも多いのですが、ELさんは使わないといいます。
「私の場合は常に光との闘いなので、スピード感が大切になってきます。真俯瞰から斜めまでさまざまな角度で撮影するので、自由に動くためにも三脚は必要ありません。昔のインスタは俯瞰が多かったけど、奥行きが欲しいので斜めからも撮るようにしています。斜めから撮影すると立体感が出るので、やはり美味しそうに撮れますよね」

食の写真を撮影するときは、歪みが気にならない85mmか90mmの単焦点レンズを使用。室内でもブレない、タムロンの三段階手ブレ補正のレンズは手持ち派のELさんにとって欠かせない。

 

1 2

撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

ELさん

フードフォトグラファー。商社で勤務後、夫との結婚を機に海外へ。その後日本へ帰国し、本格的に写真の道へ進む。英語と日本語で綴られたフードのインスタグラムは、世界中のフォロワーに支持されている。

Instagram:@latelier_del