管理栄養士の資格を活かしながら、商品開発の仕事やイベントでの講師など、幅広いジャンルの仕事で活躍されている渥美まゆ美さん。輝かしいキャリアを築いてこられた秘訣は、ブレない自分軸と行動力にありました。
全ての経験が今のキャリアに。紆余曲折の末につかんだ自分らしさ
子どもの頃からレシピ本を片手に、ケーキ作りに目を輝かせていたという渥美さん。生粋の料理好きが、大学の家政学科へ進んだのは自然な導きだったのでしょう。
「卒業後は、大手の料理教室で講師と営業の仕事をしていて、ここで講師業とデモンストレーションのスキルが身につきましたね。仕事はとても楽しかったのですが、主人の転勤で東京を離れることになり辞めることに・・・。子どもも小さかったので外で働くことができなかったのですが、当時はちょうどブログが出始めた頃で、私もこっそりやっていたんです。今と違ってブログが仕事になる時代ではなかったのですが、育児や日々の料理をアップするのが楽しくて続けていました。フードコーディネーターの資格も持っていたので、今思うと技術不足な点はあるものの、写真の撮り方にもこだわっていました」
転機となったのが、再びの夫の転勤。東京に戻れることになった渥美さんは、喜び勇んで料理の職を探したものの働くところがなかったといいます。
「35歳を超えた私には求人がなかったんです。フードコーディネーターをやりたかったけれど仕事がない。現実の厳しさを知りました。そこでとりあえず管理栄養士の資格を活かして、健保組合で働くことにしました。ここでは、シェフや料理人と一緒に、どうしたら健康的な料理を作れるのかをアドバイスしていました。当時は“外食=不健康”という時代。そんなマイナスのイメージを払拭したくて打開策を練っていました。例えば、油が多くて高カロリーなイタリアンを、野菜や豆類を上手に活かしてヘルシーにしたり、塩分が高くなりがちな和食は、美味しさを損なわない減塩レシピにしたり。今思えば、これが私の強みとなって、今の自分らしい料理の基礎が培われたんです」
“簡単で美味しくて健康的”というキーワードを軸としながらレシピ開発の仕事へ打ち込みつつも、料理コンテストに応募して賞をもらうなど、積極的に実績を積んでいた渥美さん。そんな時に舞い込んできたチャンスが、のちに大きな転機となりました。
「IT会社のオフィスにキッチンがあるものの使っていないので、自由に料理教室を開催してキッチンを使ってくれる人を探しているというお話でした。ここで月1回、おもてなしのパーティメニューの教室をやることにしたんです。集客はブログで募集したもののなかなか難しくて・・・。ただ、教室に来てくれた生徒さんで、たまたま雑誌の編集者だった人がいて、そこから雑誌の仕事をいただけるようになったんです。とくに狙ったわけではなかったのですが、ブログで発信していた料理が、簡単とか美味しいとかヘルシーを謳っていたので、時代が求めるレシピとリンクしていたのかなと思います。“管理栄養士かつ料理家”があまりいなかったのも強みだったかもしれません」
これを機に、人づてに紹介されたり、テレビ番組からのオファーが来たりと、仕事はますます絶好調に!数多の管理栄養士や料理家がいる厳しい業界で、渥美さんが次々とオファーをもらえる理由はどんなところにあるのでしょうか?
「とくにマーケティングなどの戦略的なこともやっていませんし、最初からこれが絶対にやりたいという芯があったわけではありませんでした。でも仕事をするうちに譲れないこと、気づいたことはどんどん行動に移しています。私の場合は、管理栄養士としての知識を武器に、レシピを提案できるのが強みかなと思います。仕事の依頼も、自分のテーマにズレていなければ引き受けています。アシスタント経験もなかったので、最初は戸惑いだらけでしたし、キャリアを重ねた今でも、もう少しこうすればよかったんじゃないかとか、反省することばかりです。でも、やるからには伝えたい思いがあるし、よりいい仕事がしたいので、悩んでいる暇はありませんね」