
教科書的なマニュアルを知らないと言っても、何でもありという訳ではありません。そこには黄川田さんらしい哲学がしっかりと込められています。
「クライアントの意向や求めているものを汲みながら、決められた中で自分らしいアクセントを加えています。最終的には自分の“好き”という直感を大切にしているので、個性が出るのかなと思っています。リース屋さんで器を選ぶ基準は、“見てピンとくるもの”。同じピンクでもフューシャピンクをとり入れるのがが好みだし、布だったらリネンのざっくりした感じが好きとか、カラフルで華やかな花よりはリラックス感のある植物が好みです。あとは、私にとってやっぱり家族がキーワードなので、非日常的なラグジュアリーなものよりは、子どもや家族に喜んでもらえる簡単なものを作りたいと思っています。自分の好きなことや、生活にリンクしているものを発信していきたいという思いが根底にありますね」
まったくの異業種から、料理家という道を選んだ黄川田さんだからこその強みもあります。
「これまで経験してきたすべてが糧になっていると思います。たとえばコーディネートで問われる色のバランスは、メイクアップアーティスト時代に色の組み合わせ方を学んできたことが生きているし、料理なら、料理番組のディレクター時代に、ゲストに来ていただいた有名シェフたちの技術を間近で見せてもらったことが大きいと思います。野菜の切り方から盛り付け方まで、毎回発見がありましたから」
やりたいことを実現していくために、どんなことをやってきたのでしょうか?
「やってみたいことは、臆せず口に出して人に伝えていくことです。そこから思わぬご縁をいただくことができますから。そしてチャンスを得たら、即行動できるのも強みです。実際、メイクの仕事も料理番組の仕事も、経験はゼロでしたが人との縁で繋がって、無我夢中でやり続けたからこそ結果がついてきたんだと思います。」
料理以外の経験も遠回りではありません。これまでの体験はきっと料理家としての活動に活きてくるので、日頃からさまざまな事にアンテナを張って、積極的に取り組んでいくことは学びになるはずです。
黄川田さんの初めての著書『tottoちゃんのかんたんdeco弁』(祥伝社)。黄川田さんの友人がモデルとして登場する雑誌のページで、お弁当がスタイリングの小道具として必要になり、黄川田さんに声がかかったのがきっかけ。その時に作ったのが、表紙にもなっている黄色のお月様のdeco弁。「星のテーブルクロスに合わせて月型の卵チャーハンを作ろうと思ったんです」。編集者にも好評で、これを機に毎月レシピを提供するようになった。