特集記事

自分らしい“世界観”の作り方

スキルアップ
2020年02月20日
いま、飲食業界には、テクノロジーの進化によって様々な変化が訪れています。料理を取り巻く最新の動向にくまなくアンテナを張ることは、時流を捉え活躍する料理家への近道です。本連載では、情報発信ツールの活用法やレシピ開発、料理教室運営方法のノウハウなどをお伝えしていきます。調理技術を磨くと同時に、情報をアップデートし、“できる料理家”を目指しましょう。

教科書的なマニュアルを知らないと言っても、何でもありという訳ではありません。そこには黄川田さんらしい哲学がしっかりと込められています。

「クライアントの意向や求めているものを汲みながら、決められた中で自分らしいアクセントを加えています。最終的には自分の“好き”という直感を大切にしているので、個性が出るのかなと思っています。リース屋さんで器を選ぶ基準は、“見てピンとくるもの”。同じピンクでもフューシャピンクをとり入れるのがが好みだし、布だったらリネンのざっくりした感じが好きとか、カラフルで華やかな花よりはリラックス感のある植物が好みです。あとは、私にとってやっぱり家族がキーワードなので、非日常的なラグジュアリーなものよりは、子どもや家族に喜んでもらえる簡単なものを作りたいと思っています。自分の好きなことや、生活にリンクしているものを発信していきたいという思いが根底にありますね」

まったくの異業種から、料理家という道を選んだ黄川田さんだからこその強みもあります。
「これまで経験してきたすべてが糧になっていると思います。たとえばコーディネートで問われる色のバランスは、メイクアップアーティスト時代に色の組み合わせ方を学んできたことが生きているし、料理なら、料理番組のディレクター時代に、ゲストに来ていただいた有名シェフたちの技術を間近で見せてもらったことが大きいと思います。野菜の切り方から盛り付け方まで、毎回発見がありましたから」

やりたいことを実現していくために、どんなことをやってきたのでしょうか?

「やってみたいことは、臆せず口に出して人に伝えていくことです。そこから思わぬご縁をいただくことができますから。そしてチャンスを得たら、即行動できるのも強みです。実際、メイクの仕事も料理番組の仕事も、経験はゼロでしたが人との縁で繋がって、無我夢中でやり続けたからこそ結果がついてきたんだと思います。」

料理以外の経験も遠回りではありません。これまでの体験はきっと料理家としての活動に活きてくるので、日頃からさまざまな事にアンテナを張って、積極的に取り組んでいくことは学びになるはずです。

黄川田さんの初めての著書『tottoちゃんのかんたんdeco弁』(祥伝社)。黄川田さんの友人がモデルとして登場する雑誌のページで、お弁当がスタイリングの小道具として必要になり、黄川田さんに声がかかったのがきっかけ。その時に作ったのが、表紙にもなっている黄色のお月様のdeco弁。「星のテーブルクロスに合わせて月型の卵チャーハンを作ろうと思ったんです」。編集者にも好評で、これを機に毎月レシピを提供するようになった。

 

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撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

黄川田としえさん

料理家、フードスタイリスト。広告、雑誌のフードコーディネート、レシピ開発、イベントのフードケータリングなどを手がける。家族を対象としたワークショップ『tottorante』を主宰。食育活動にも力を注ぎ、子どもと作る料理教室や企業とコラボしたレッスンを不定期で開催。
Instagram:@tottokikawada