カレーで切り拓いた、自分だけの道

インタビュー

初めてのレシピ本を出版したり、レストランをオープンしたり。食に関わる仕事でひとつの夢を叶え、ターニングポイントに立った話題の料理家や食に関わる職業の方へのインタビューをお届けする新連載。「何かはじめたい」という思いを持った人へ、一歩踏み出すためのヒントに溢れています。

2019年11月21日

「流しのカレー屋」というユニークな肩書きを持つ、阿部由希奈さん。2018年に拠点となるアトリエ「kitchen and CURRY」を立ち上げ、2019年には初めてのレシピ本『スパイスでおいしくなる and CURRYのカレーレッスン』を刊行するなど、活躍の場を広げています。以前は飲食業とは無縁だったという阿部さんの、パワフルかつ軽やかな足取りを追いかけます。

週に2日だけキッチンになるアトリエ。

京王線の新代田駅から歩くこと数分。緑豊かな住宅地の一画に、スパイスのいいにおいが漂います。そこは、カレー料理人・阿部由希奈さんのアトリエ「kitchen and CURRY」。日本各地に赴いてカレーを作る流しのカレー屋である阿部さんが仕込みの拠点としている場所で、週に2回だけそこを開放し、「kitchen and CURRY」として、訪れる人にカレーを提供しているのです。
「チキンとかぼすのカレー」「ルッコラとラムのカレー」「柿とれんこんのカレー」…… 今までにない素材の組み合わせが新鮮なカレーは、それぞれに使われているスパイスも異なり、驚きに満ちたおいしい体験ができるものばかり。10席ほどの小さなスペースは、肩を寄せ合いながらカレーを楽しむ人たちでいつもいっぱいで、ピースフルな時間が流れています。


この日のカレーは「かぼすチキン」と、おくらとおかわかめ入りの「サンバル」。2種を両方かけた「あいがけ」は1400円。ごはんは五分づき、付け合わせはレンズ豆と紫キャベツのマリネにさつまいものココナッツ炒め、ライタ。混ぜながら食べると至福のおいしさ。

 

カレーにのめり込んでいった会社員時代。

阿部さんがカレーとの衝撃的な出合いを果たしたのは、ウェブ関連の会社で働いていた2014年のこと。
「たまたま会社の人と行ったネパールカレーの店で、『こんなカレーがあるんだ』と驚いたことが始まり。それまで食べていたルゥを使ったカレーと違ってさらさらで胃にもたれず、香りも複雑で、混ぜるという食べ方も新鮮。一度でとりこになりました」
以来、カレー店を食べ歩く日々がスタート。あちこちに足を運びながら、おいしいだけでなくおしゃれで女性も居心地のいい店をピックアップし、「女子会ができるカレー屋」としてフェイスブックに投稿し始めます。
「同時に、自分でもカレーを作るようになって。スパイスや素材の組み合わせで味がまったく変わることが面白くて、あれこれ試してはそれもフェイスブックに投稿していたんです」
すると、それを見た行きつけのたこ焼き屋のご主人から、「うちの営業時間外の時間に、ここでカレー屋をやってみたら」との提案が。かくして2015年の8月から月に1回、たこ焼き屋の店舗でカレー屋を開くことになります。
「自分が作ったもので喜んでもらえて、直に感想も聞ける。会社員では味わえない、明快な楽しさでした」そこからカレー熱はさらにヒートアップ。カレー活動がよりしやすいように 2016年、阿部さんは会社をやめ、フリーランスのウェブディレクター&人事職の道を選びます。かくして、カレー屋との「3足のわらじ」生活が始まったのでした。

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撮影/津留崎徹花 取材・文/新田草子

阿部由希奈

1984年大阪府出身。カレー料理人、「and CURRY」主宰。2015年から間借りのカレー店を始め、その後流しのカレー屋として活動。2018年にカレーの拠点 として「kitchen and CURRY」を立ち上げる。ももこと晋作の愛猫が登場するインスタグラム(@yukinaa.m)も人気。

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