
「もっと自由でいい」。そんな想いを込めた初のレシピ本。
さて、2018年の「kitchen and CURRY」発足後、ウェブディレクターに続いて人事の仕事もやめて、カレー活動に専念し始めた阿部さん。縁あって、2019年に初めてのレシピ本を上梓します。『スパイスでおいしくなる and CURRYのカレーレッスン』。基本的なスパイスや具材を解説し、おすすめのサイドディッシュやサラダなどもフォローした丁寧な作りの一冊です。カレーは5つのカテゴリーごとに5種、全部で25種。「本当は、レシピ数をもっと多くした方がいいのでは、という意見も出たのですが…」というなかで、あえてレシピ数を絞ったのには、こんな理由がありました。
「私、実はカレーを作り始める前までぜんぜん料理ができなかったんです。みそ汁すら作れなくて、母に電話で作り方を聞くくらい(笑)。だから、料理ができない人の気持ちがよく分かる。料理初心者はいきなり50種類のレシピを見せられても、作りきれずかえってストレスになってしまうと思うんです。だったら数を減らして、繰り返し作れて自分でもアレンジしやすいものだけにしようと」。5つのカテゴリーの分け方を、「シンプル」「ほっこり」「ちょっと大人」など、感覚的にしたのも、肩肘張らずに作って欲しいという願いの表れでした。「自分自身、会社員だった頃は『~しなければ』といろいろなことに縛られていました。それが、カレーを作ることで『もっと自由でいいんだ』と思えるようになった。そんな解放感を、この本を手に取ることで、日々忙しく張り詰めている女性たちにも味わってもらえたらと思っています」

『スパイスでおいしくなる and CURRYのカレーレッスン』(立東舎)¥1,500。カレーに欠かせない基本スパイスからスタメン食材、その切り方まで、カレー作りのワザを優しく伝授。阿部さんの想いが綴られたエッセイもグッとくる。
かくして精力的に活動し続ける阿部さんですが、2019年の終わりから4月頃まで、いったんお休みに入る予定です。
「実は1月末に出産を控えていて……、落ち着くまで流しもキッチン開放日も小休止します。でも、やりたいことはいろいろあって。例えば、妊娠してから1日の栄養素を計算してみたら、意外と足りていないビタミンがたくさんあると分かったんです。そこから、野菜や果物のことを改めて学びたいと思うようになりました。ひとり暮らしや少人数の家族だとたくさんの種類の野菜を一度に摂るのは難しいですが、そこでもカレーが助けになるかもしれません。今度は、野菜や果物に焦点を当てたレシピ本を作ってみたい。これからも、おもしろいカレーを作っていきたいです」
飽くなきカレーへの愛を胸に、阿部さんの挑戦はまだまだ続きそうです。