
一見強面(こわもて)、けれど温かなホスピタリティーとユーモアに溢れる林さんの講義には、笑ったりうなずいたりしながら、参加者の皆さんは終始夢中で聞き入っていました。
まずは多彩な素材がある包丁の種類について学びます。包丁というと多くの人はその素材は鉄、鋼(はがね)、ステンレスを思い浮かべるのではないでしょうか。実は「鉄」は単体だと柔らかすぎ、刃物にするには不向き。鋼は硬くて強いけれど錆びやすい、ステンレスは硬くて錆びにくいけれど市場に流通しているものの品質差が大きいので買う時には注意が必要、など、刃物には実は、覚えておくべきさまざまな特徴があります。さらに刃物のクオリティを決める3要素として、“素材”“焼き入れ”“刃付け”があり、それらの組み合わせで価格が決まる、というレクチャーがありました。包丁の種類と用途について詳しい解説がなされたあと、林さんが砥いだ包丁と、そうでない包丁を使って、参加者全員が野菜を切り比べます。
もちろん工場仕上げの包丁もよく切れるのですが、林さんが丁寧に砥ぎ上げた包丁の切れ味といったら、まったく食材の抵抗を感じないといってもいいほど! 「切り口のみずみずしさが違う」「噛んだときの音が違う」と、一同、切り心地だけではない違いにも驚きます。「私は玉ねぎを切っても涙が出たことがないんですよ」と林さん。
ここで休憩時間。参加者の皆さんは、展示されていた用途別のさまざまな包丁に触れたり、もう一度砥ぎたての包丁の切れ味を確かめたり、気になっていたことを林さんに質問したりと、包丁への関心が一気に高まったようです。
第2部では、実際に林さんが包丁を砥ぎながら、砥ぎ方をレクチャーします。包丁によって刃の付け方が異なり、砥ぎ方も違ってくるため、今回は両刃の洋包丁で紹介。研ぐ前に砥ぎ石を15分くらい水に浸けておくことや、刃を石に当てる角度は15°ほどに保つのが理想的で、両刃の包丁であれば両面合わせて30°、女性の小指の第一関節くらい挟んだ角度で安定させること、また砥ぎ石は真ん中がえぐれたり折り返しによる角度のブレを少なくするために、縦の幅いっぱいまで使って砥ぐことなど、細かいポイントを丁寧に紹介。
「押すときも引くときも力を入れず、ゆっくりでいいので正確に砥ぐことを意識してください」と林さん。