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初対面で相手の心をつかむ方法

スキルアップ
2019年01月22日
料理教室に通ってきてくれる生徒はもちろんのこと、出版社やテレビ局などのメディアに対する営業を行ったり、企業とのコラボレート企画に携わったりと、フリーの料理家といっても仕事をする上で初対面の人と話す場面は避けられません。その場で相手から「この人と一緒に仕事をしたい」「この先生に習ってみたい」「この人の話をもっと聞きたい」と思ってもらえるには、どんなことが大事なのでしょうか?

新しい出会いは不安がたくさんあるけれど、意識的に良い面にばかり心を向けておくことで、結果もよくなる、ということのようです。

表情の豊かさは自分にも良い効果が!


相手の心を引き付けるためにナチュラルで動きのある表情が大事、と紹介しましたが、実はその表情は相手だけでなく自分にも良い効果を及ぼしてくれる、と佐藤さんは言います。
「あなたが良い表情でいれば、相手はあなたを好意的に見る、というのが最初に紹介した対他効果ですね。一方で、自分自身に向けた対自効果というものもあるのです。表情筋がくるくる動くと、脳はその表情をしている時の感覚、つまり楽しい、嬉しいという過去の状態を無意識のうちに思い起こさせてくれます。そして、その時の記憶に従ってドーパミンやα波が出てきて、本当に楽しい気持ちになれるものなのです。さらに、あなたの表情を受けて相手もミラーリング効果で知らず知らず良い表情になりますから、自分が笑顔になることで相手からも笑顔がもらえて、その結果、リラックスして過ごせる、というわけです」。
初対面の場を気持ちの良いサイクルに持っていくために、自然な笑顔は欠かせないということがわかりました。

相手が心地よく感じる声の要素とは?


もう一つの「言葉以前の印象」の要素である声についても伺いました。
「相手を説得したい、あるいは好感を持って欲しいと思うなら、声についても配慮する必要があります。

  • 話すスピードは適度か
  • 声の大きさはちょうど良いか
  • 息漏れをした、すかすかの声になっていないか
  • 言葉と言葉の間の「ポーズ」はちょうど良いか
  • 程よく適切なイントネーションがついているか
  • 内容に合った声の高低の変化がつけられているか
  • 声に威圧感がないか

といった要素です。ある調査によると、声に威圧感のある人はそうでない人の1.5倍訴訟されているといいますから、円満な人間関係のためには欠かせない要素なんです」。
初対面のその場でこれらのことを意識していると上の空になってしまいそうですが、日頃から心がけておくこと、前日や出かける前に意識することでも随分違ってくるのではないでしょうか。

実は「会う前」から印象は決まってしまう!


これまで、相手のオフィスに通されてから、あるいは料理教室の扉を開けてから、という前提で初対面に好感度を抱いてもらうにはどうすればよいかについて話を伺ってきました。が、実際の「初対面」の現場となると、ロビーや受付で待ち合わせたり、どこかの会場で出迎えられたりといったシーンも多いはず。そんなときに、「初めまして」という挨拶を交わすよりもずっと前に、相手には印象を与えているものだと、佐藤さんは言います。
「人は15メートル離れたところからでも相手の印象を判断します。声も聞いていない、よほど目のいい人でなければ表情や人相もわからない距離です。そのポイントは“姿勢”。元気よく背筋を伸ばしているか、なんとなく肩を丸め、首が下がった感じで歩いているかで、相手の方はあなたの性格や人柄、やる気を判断してしまいます」。

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撮影/山下みどり 取材・文/吉野ユリ子

お話を聞いた人:佐藤綾子さん(博士・パフォーマンス学)
1969年信州大学教育学部卒業、上智大学大学院、ニューヨーク大学大学院修了。日本におけるパフォーマンス学の第一人者として活躍。ハリウッド大学院大学教授、博士(パフォーマンス学・心理学)、国際パフォーマンス研究所代表。日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラー。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は180冊以上、累計315万部を超える。