コンセプトづくりとは、自分の思いを突き詰めること
短大を卒業する頃、就職活動にも失敗し、長年交際していた彼との突然の別れも重なって、将来への希望も生きる目標も見失った22歳のSHIORIさんの頭に浮かんだのは、“自分は料理を作ることが好き”という思い。それを仕事にすることで明日への一歩が開けるかもと考え、さらに掘り下げていった結果、 “初めて料理をする若い女の子のための料理本を作りたい”という思いがはっきりしたといいます。
「コンセプトとターゲットが明確になれば、行動すべきことは少しずつ見えてくると思うんです。私の場合は、自分と同じ世代の、料理をしたことのない若い女性たちがターゲット。彼女たちが、自然に料理を楽しむライフスタイルを定着させるにはどうしたらいいか? ただそれだけのことについて徹底的に考えたんです」。
今でこそ人気料理家となったSHIORIさんですが、当時、 “どんなふうに人と自分を差別化しようか”と考えたのではなく、ひたすら自分の思いを突き詰めた結果が、幸いなことに確固たるオリジナリティーの確立へとつながっていったのでした。
リスクの中にこそ、チャンスが隠れている
「若い女性料理家による若い女性のための本」というコンセプトがあったため、“22歳までに出版する”ということに大いに意味があると考えたSHIORIさん。まずはフードコーディネーターになるため、膨大な数のスクールのなかから指導理念や授業内容、卒業生の活躍などをリサーチし、ここだと思える学校に入学します。週末の授業のかたわら、売れ筋レシピ本を研究するため、毎日のように書店に通っていました。
「学校で学ぶにつれ、無名の新人がいきなり出版をするのは難しいことがわかりました。なので、まずは雑誌で実績を積もうと考えました」。
SHIORIさんが最初に門を叩いたのは、ファッション誌の編集部。
「私のターゲットは、料理雑誌じゃなくてファッション誌を読んでいるような女の子だと考え、いつも愛読しているファッション誌にアプローチしました」。
愛読誌の編集部に加え、人気ファッション誌と言われる編集部に片っ端から手紙を送ったけれど、なしのつぶて。けれどその営業活動から1年ほど経った頃、売り込み先の編集部担当者から突然、連載の話がきました。そしてこれを足がかりにして、また別のファッション誌にも売り込みを行い、いくつもの現場経験を重ねたところで念願だった書籍の売り込みを開始しました。