さらに同世代の女性によるレシピだということを明確にするため、すべて表紙には自分が登場することにしました。「恋する女の子の気分にフィットするよう、ヘアメイクやファッションもほんわかした雰囲気にしました。当時、実際の私に会ったファンの人は、想像以上にちゃきちゃきしている私にみなさん、驚いていました(笑)」
露出のタイミングや打ち出し方をコントロールする
“彼ごはん”シリーズが大ヒットすると、他の出版社から声がかかるようになりましたが、3~4年間はそれらの仕事をすべて断っていたそうです。それも、結果的には自己のブランディングにつながった、とSHIORIさん。
「もともとは、“彼ごはん”シリーズの出版を決めてくださった最初の出版社にご恩返しをしたいという気持ちからでした。そのおかげで、年に2冊のペースで計画的にていねいに本を作ることができ、読者の皆さんにもいつも新刊を待ち望んでいただけたと思います。もしもあの時、声をかけていただくままに仕事をお受けしていたら、ひとつひとつにじっくり取り組めなかったばかりか、売れ行きが分散して信頼を失っていたかもしれない、と今では思います。4~5年経ったころから、他の出版社からも本を出し始めましたが、A社は一人暮らしをテーマに、B社はお弁当をテーマに、というように、出版社ごとにコンセプトを分けるようにしていました。おかげでどの出版社とも気兼ねなくいいお仕事ができたように思います」。
チャンスをしっかりつかむことも大切ですが、自己のブランディングや仕事のキャパシティー、さらには仁義までを考え、受けたい仕事が来た時にもぐっと我慢していたというSHIORIさん。ここにも、セルフプロデュースの極意が垣間見られます。
「彼ごはん」を卒業した先の新たなテーマ
ところがSHIORIさんはその後、27歳でスランプを迎えました。その理由は、ご自身の結婚。
「独身女性の私が同じ目線で紹介する、独身女性のための料理がコンセプトだったのに、その私が主婦になってしまったんです。この先、何を打ち出していけばいいのか、かなり悩みましたね」。
改めて自分を振り返った時、“このスランプは自分の料理への自信のなさからくるものだ”と気づいたSHIORIさん。気分転換も兼ね、海外の料理学校に短期留学をすることにしました。
「それまでの私が“彼ごはん”で紹介してきたものも、ごく一般的な家庭料理でした。でも世界の料理を学ぶなかで改めて、私が伝えたいのは、食べてホッとするような、毎日食べたくなる家庭料理だと改めて気づいたんです」。
“彼ごはん”の次のステージを求めて出た旅で、新たな“伝えたいもの”を見つけたSHIORIさん。その頃から作る料理にも変化が出てきました。
「時短・簡単料理だけでなく、これからは日常的な家庭料理にこだわりながらも、“今まで食べた中でいちばん美味しい!”と感動してもらえるレベルの家庭の味を生み出していきたいと考えるようになりました」