料理写真のカギは何と言っても「光」
さまざまなワークショップや撮影セミナーの講師としても活躍しているNana*さん。料理写真を撮るインスタグラマーの場合、多くの人が、いつも同じ場所・同じ光で撮影していることが気になっていたのだそう。
「ベストのポジションが一か所に決まっていて、いつも同じ写真をアップすると心に決めたのであればそれでもいいのですが、漫然とダイニングテーブルやリビングテーブルに被写体となる料理を置いて撮影しているのだったら、ちょっともったいないですね。自分の周りで光がきれいな場所はどこなのか、時間帯や天候によっても刻々と変わりますので、料理を作ってから光のいい場所を探すのではなく、日頃からどこでどんな光が表現できるのかを知っておくといいと思います」
Nana*さんの写真はよく加工編集をしていると人から思われるそうですが、実はほぼ自然な光を生かして撮影し、ディテールだけを調整しているのだとか。料理の器は小さいですが、窓はそれよりもずっと大きいので、同じサイド光(測光)で撮影しているつもりでも、被写体をほんの少し動かすだけでかなり印象が変わります。ちなみに時間帯によっても光が変わりますが、Nana*さんの一番好きなのは朝一番の光。「印象に残る写真が撮りたいなら、太陽が昇りきる前に窓から差し込むような光で、光と陰をうまく利用すると、初心者でもドラマチックな一枚に仕上げられると思います」と教えてくれました。
一方、昼間の撮影であれば安定した光が得られるとも。状況に応じてメリットは異なると話してくれました。
光の強さを、さらに「見せたいイメージ」に近づけるための調整
美しい光が差し込む場所を見つけたら、その光が撮りたい料理とマッチしているかどうかを考えましょう。
「撮影する料理によって、色の鮮やかさを見せたいのか、とろっとした感じを見せたいのか、ツヤツヤ感を表現したいのか、ほっこりした雰囲気を伝えたいのかなど、表現したい要素は違いますよね。なので私は、それに合わせて光を調整します」
強い光を被写体に当てれば、結果、シャープで硬い印象に、逆にやわらかい光であれば料理もやわらかく映ります。窓からどのくらい離れるかによっても映り方は変わりますが、白いレースなど透過性の高い薄い白布、または光を完全に遮断するような黒布で部分的に光源を覆うなど、さまざまな方法で光を操作することで、見せたい印象に合った光を作ることができるとNana*さんは言います。
テーブル、皿、カトラリー。スタイリングも重要なメッセージ
伝えたいイメージを左右するのは、光だけではありません。
「写真に写りこむものはすべて、視覚イメージに影響を与えると思うんです」とNana*さん。
「かっこいい写真を撮りたいのに、手元にイメージに合うものがないからといって、ほっこりした木製のカトラリーを使っていては雰囲気が台無しな気がします。例え、端っこに小さく映るだけだとしても。器ももちろん同様。さらにランチョンマットやテーブルも面積が広いので大きく印象を支配することになります。ぴったりの撮影小物が見つからないなら撮影を諦めるるくらいの気持ちで、一枚の写真の中に映るものを意識するようにしています」