
「食品メーカーなど、企業から“組みたい”と思ってもらえる人材にならなくてはと考えた時、代理店や企業の担当者が企画を採用しやすく、クライアントや上司に通しやすい条件として、“料理教室”だけでなく、“レシピ本”や“メディア実績”、“資格”といった要素も揃えておくことが必要だと思ったんです」
そこで父に100万円の借金を頼み、食関連の資格を短期集中して多数取得するとともに、本の企画書を常に持ち歩いて様々な人に売り込みました。この努力が功を奏し、最初の著書『魔法のココナッツオイルレシピ』を出版。さらにこの本が元となってテレビ番組『ヒルナンデス!』のココナッツオイル特集出演につながり、そのまま次々とチャンスが広がっていったのです。
そんなYOSHIROさんが、これらの活動と並行して行っていたのがブログやSNS。すでに世間ではブログ、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、ピンタレスト、Tik Tokなどでの個人による情報発信メディアがあふれかえっている状況でした。YOSHIROさんがYou Tubeの料理動画に取り組んだのは今から2年前。話題のアプリはひと通り利用していて、同様にYou Tubeもチェックしていましたが、本格的に料理動画を配信している料理家がほかに見当たらなかったこと、動画なら海外の人にも見てもらえるということ、そしてもともと映像編集などが嫌いでなく、友人の結婚式の映像なども作ったことがあったことから、気軽に始めたのだといいます。
当時、真俯瞰(真上)から撮る動画が話題になり始めた頃で、ビジュアルとしても美しいと感じたYOSHIROさんは、このスタイルを採用。
「早回しのコマ送り料理動画などはけっこう出ていましたが、ただ完成までの様子を見るだけで、肉が柔らかくなるタイミングや、『とろみをつける粘度はこのくらいがベスト』といった、ポイントをしっかり伝えているものはありませんでした」
一方、エクササイズやギターの弾き方を教えるYou Tubeは存在していたため、その料理版をイメージし、“ウェブで通える料理教室”というコンセプトで、まるで教室に通っているような丁寧さを意識して動画を作ることにしました。
映像制作会社スタッフに指導を依頼
動画制作にあたり、YOSHIROさんは当初から「やる以上は本格的なものを」ということを意識したそう。
「そのまま商品として売れるクオリティにこだわりました。それは例えば食品メーカーの人がお金を出して“この動画でうちの商品を使ってください”と言いたくなるような動画、あるいは動画パッケージとして販売できるレベルの動画ということ。それができていれば、たとえ再生回数が少なくても自分のツールになると思ったんです」
カメラ機材はCM撮影用の本格的なものをレンタル。動画の撮影や編集技術については、映像制作会社のスタッフに指導を依頼したといいます。また世界の人に見てもらうため、コメント欄に英訳も添えていますが、これも翻訳家に依頼しています。
「投資もしていますし、制作時間にしても、1本作るのに大体12時間くらいかけていますから、決して楽な作業ではありません。動画をアップしたあとブログや各種のSNSで告知するのも、実は結構大変な手間ですしね」
動画を始めた当初はこれを週2〜3回アップしていたというから、驚きます。
「とにかく一度しっかり取り組んでみて、それでもダメだったら諦めがつくと思って(笑)。フリーランスや料理家という世界はなろうと思えば誰でもなれますが、その中で選ばれる存在になるためには、自分の色を出していかなくてはいけない。それは料理の内容も、売り込み方も、全てにおいてだと思います。ただ、その“色の出し方”は自分の好きなこと、得意なことでしかできませんよね。音楽が好きな方ならBGMにこだわったり、カメラや文章を書くのが好きな方ならそこに力を入れるなど、強みを生かすことが大事だと思います」