作家・心理カウンセラーの五百田達成さんに聞く「仕事運を上げる話し方」【好感度アップコラム】

料理は得意だけれど話し下手、あるいは、初対面の人が苦手という料理家は意外と多いようです。けれどもちろん、食材とだけ会話が通じればいいわけではないのがこの仕事。生徒から信頼や人気を得て、仕事相手やクライアントに「また一緒に仕事をしたい」「ぜひ先生にお願いしたい」と思ってもらうには、どんな話し方を心がけるといいのでしょうか。心理カウンセラーの五百田達成さんに話を伺いました。

2019年09月12日

まずは“ビジネス語=男語”の存在を知ろう

「ビジネスパーソンとして認められたいなら、ビジネスパーソンが使う言葉を話すこと、これに尽きると思います」と言う五百田さん。とはいえ、それがどんな言葉かわからない…という方も多いでしょう。具体的にお話を伺いました。

「少々大雑把な言い方で、誤解や反感を招くかもしれないのですが、世の中には大きく分けて“男語”と“女語”があります。その表現に抵抗がある場合は“ビジネス語”“プライベート語”と置き換えても構わないのですが、ここでは便宜上、男語と女語ということにしましょう」。

フリーランスの人、あるいは企業で働いた経験がない人が失敗しがちなのは、その“男語”に慣れていないせいだと、五百田さんは言います。

例えば企業に所属する人と話す場合、相手が男性であれ女性であれ、男語を使うほうが効果的なことが多いそう。

「例えば男語は、結論を先に述べて “その理由は3つあります。第一に〜”というように、論理立てて構築的に話すことを好みます。一方女性は、柔らかで雑談的な会話からごく自然に本題へとストーリーを繋げ、エモーショナルな表現も巧みに織り交ぜて話す傾向があるでしょう。どちらがいい悪いではなく、ビジネス社会、特に男性の多い企業であれば、前者のような男語の方が“聞き慣れた安心できる会話”になるため、男語を使うことで安心と信頼を勝ち取りやすいのです」

野球で育った男子と、おままごとで育った女子

この違いは単なる言葉の違いではなく、発想そのものの違いです。

「イメージとして思い浮かべて欲しいのは子供の頃の遊びです。男子は草野球を、女子はおままごとをしたりしたでしょう。野球にはチームがあり、ルールがあり、敵味方がいて勝敗があります。ゴールは“戦いに勝つこと”であり、そのために監督がバントのサインを出せば、自分の意志は一旦脇に置き、勝利のためにバントします。一方おままごとは、役割はあっても、ルールも勝敗もありません。相手の設定したキャラクターを察しながら和やかな会話をし、みんなが仲良く過ごすことがゴールなのです。このルールがそのまま、男語と女語の発想といってもいいでしょう。ビジネスシーンに出たら“今からはおままごとでなく草野球をやるんだ”と心に決めるのがポイントかもしれません」

「タテ社会」を念頭において会話ができるか

実際のビジネスシーンでは、この発想はどんなふうに反映されるのでしょうか。さらに具体的な例を挙げてもらいました。

「男語はタテ社会、女語はヨコ関係をベースにしています。女性にとっては、最終的に生徒さんや参加者の方の満足や幸せがいちばんの喜びでしょう。そのために企画チーム一丸となってみんなで素敵なものを生み出そうとするのも当然です。けれどその発想は、男性には甘い幻想のように聞こえてしまうのです。一方の男性は、そのプロジェクトを勝負に見立てます。競合企業にいかにして勝つか、より多くの集客や売り上げにつなげる方法を計画し、さらにメンバー一人一人がその中でどんな役割を担うかを明確にします。企業内の上司部下、クライアントと代理店と制作スタッフなど、すべてを上下の関係で捉えていて、その中で誰のジャッジを軸にするかを瞬時に見分けます」。

ゴールの設定もチームの捉え方もこれほど違うということを知れば、相手の思考に則った発言が重要だということがよくわかるでしょう。

褒め言葉にも「数値化できる褒め方」がある

例えばイベントの当日、施設に訪れた時の感想ひとつとっても、男語と女語では違ってくると五百田さんは言います。

「女語では “素敵ですね!”“イメージ通り!”“お客さん喜んでくれそうですね”といった表現が褒め言葉になりますが、男語ではそれは意味のないコメントです。その代わりに、“さすが、立派なステージですね!”“広い会場なのに満席ですね”“これはバズりますね”といった、数値化でき、成果や結果として残るような表現で心を掴む傾向があります」。

仕事相手との会話、メールの書き方ひとつでも、この発想をベースに言葉を選ぶと、単なるお飾りのクリエイターではなく、対等なビジネスパーソンだと思ってもらえて、さらに別の企画などに発展するかもしれませんよ、と五百田さん。

女語を意識するなら「共感」をキーワードに

一方、普段の教室や登壇イベントなどではどのように振る舞えばよいのでしょうか。「これまでの話を読んで、自分は女語の発想になってしまいがち、と感じている方なら、普段通りにやっておけば問題ありません。逆に、仕事だとつい堅苦しくなってしまうとか、生徒さんとの距離が一向に縮まらず生徒が定着しない、といった悩みを抱えているなら、意図的に女語を取り入れるといいでしょう」。

説明をするときも、先生と生徒、経験者と初心者といった線引きをする話法はご法度。あくまで料理を愛する仲間という言葉選びが共感を得ます。

「〜ですよね、と共感を求める語尾も一つのポイントです。テレビを注意深く見ていると、近年はスポーツ解説者なども、男性でも、自分の知見を解説する場合でさえ“〜なんです”と言い切らず “〜ですよね”と同意を求めるような言い回しをします。それによってぐっと親しみがわき、距離を縮めることができるのでしょう」

男語と女語をスイッチさせる上級テクニック

さらにその日の参加者やテーマなどによって、男語と女語の度合いコントロールできたら上級者、と五百田さん。

「女性が“共感する相手”にお金を払うのか、“尊敬できる人や権威者”にお金を払うのかは、実は僕自身も模索していて、プロフィールの書き方一つでも毎回悩んでいます(笑)。参加者の方が親しみやすさを求めているようであれば、男語を振りかざすと無機質で通り一遍な印象を与えてしまうかもしれませんし、逆の目的の方にあまりエモーショナルな話し方やフランクな雰囲気を出すと“高いお金を払ったのにぐだぐだだった”と思われるかもしれません。アイスブレイクするような和やかな女語の雰囲気で始めて、本題ではやや論理的な男語スタイルで話し、終了後の打ち上げでは再び女語で親しさを出す、などということができれば、あらゆる方から満足や信頼感を得ることができるでしょうね」

女性に多い「自虐型謙遜」はチャンスを失う

最後に“男語”“女語”以前の、ビジネスシーンで気をつけたほうがいい言い回しについて教えてくれました。

「ビジネスの場では、まずはプレーンでフェアな言い回しを心がけることでしょう。特に、保険をかけるような言い訳、自虐的な物言い、偉そうに思われないようにするためのディフェンシブな表現などは、百害あって一利なしです」。

“私、数字が弱いので”“昨日全然寝てなくて”といった言い訳、 “ざっくり考えただけなのでボツでいいんですが”、“私おばさんだからわかんなくて”など、謙遜を込めた自虐や尻込みは、特に女性に多い傾向で、それを繰り返しているうちに周囲から実力より低く評価されるだけでなく、実際に力を発揮できなくなる、という研究結果もあるのだそうです。

自虐も自己顕示も含まないフラットでプレーンな言い回しを心がけたうえで、男語と女語を上手に切り替える--この発想を心がければ、あらゆるシーンで気持ちよく力を発揮し、相手から信頼や好感を得られるでしょう。

撮影/山下みどり 取材・文/吉野ユリ子

教えてくれた人 ●五百田達成

いおた・たつなり●作家・心理カウンセラー。米国CCE .Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、独立。人間関係に関する実践的アドバイスが好評を得ている。『察しない男 説明しない女』『言い返す技術』ほか著書多数。待望のオンラインサロンが10月からスタート! https://a-port.asahi.com/salon/iotatatsunari

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