説明をするときも、先生と生徒、経験者と初心者といった線引きをする話法はご法度。あくまで料理を愛する仲間という言葉選びが共感を得ます。
「〜ですよね、と共感を求める語尾も一つのポイントです。テレビを注意深く見ていると、近年はスポーツ解説者なども、男性でも、自分の知見を解説する場合でさえ“〜なんです”と言い切らず “〜ですよね”と同意を求めるような言い回しをします。それによってぐっと親しみがわき、距離を縮めることができるのでしょう」
男語と女語をスイッチさせる上級テクニック
さらにその日の参加者やテーマなどによって、男語と女語の度合いコントロールできたら上級者、と五百田さん。
「女性が“共感する相手”にお金を払うのか、“尊敬できる人や権威者”にお金を払うのかは、実は僕自身も模索していて、プロフィールの書き方一つでも毎回悩んでいます(笑)。参加者の方が親しみやすさを求めているようであれば、男語を振りかざすと無機質で通り一遍な印象を与えてしまうかもしれませんし、逆の目的の方にあまりエモーショナルな話し方やフランクな雰囲気を出すと“高いお金を払ったのにぐだぐだだった”と思われるかもしれません。アイスブレイクするような和やかな女語の雰囲気で始めて、本題ではやや論理的な男語スタイルで話し、終了後の打ち上げでは再び女語で親しさを出す、などということができれば、あらゆる方から満足や信頼感を得ることができるでしょうね」
女性に多い「自虐型謙遜」はチャンスを失う
最後に“男語”“女語”以前の、ビジネスシーンで気をつけたほうがいい言い回しについて教えてくれました。
「ビジネスの場では、まずはプレーンでフェアな言い回しを心がけることでしょう。特に、保険をかけるような言い訳、自虐的な物言い、偉そうに思われないようにするためのディフェンシブな表現などは、百害あって一利なしです」。
“私、数字が弱いので”“昨日全然寝てなくて”といった言い訳、 “ざっくり考えただけなのでボツでいいんですが”、“私おばさんだからわかんなくて”など、謙遜を込めた自虐や尻込みは、特に女性に多い傾向で、それを繰り返しているうちに周囲から実力より低く評価されるだけでなく、実際に力を発揮できなくなる、という研究結果もあるのだそうです。
自虐も自己顕示も含まないフラットでプレーンな言い回しを心がけたうえで、男語と女語を上手に切り替える--この発想を心がければ、あらゆるシーンで気持ちよく力を発揮し、相手から信頼や好感を得られるでしょう。