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家庭料理一筋で30数年 料理への想い

インタビュー
2018年08月9日

30数年に渡り、家庭料理一筋で日本の味を中心とした食文化を伝えてきた松田美智子さん。調味料を多用せず、素材や風味を生かしておいしさを引き出す料理を得意とし、理に適った調理法を提唱しています。今や本物の贅沢ともいえる、素材を軸としたレシピを生み出す松田さんの料理への想いを聞きました。
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料理は小さな文化


大和撫子のようなたたずまいに筋の通ったスタイルで、多くの女性たちのあこがれの料理家として、長く活躍されてきた松田さん。その料理哲学について、あらためて尋ねてみました。
「料理をおいしくするために先人たちが積み重ねてきた素晴らしい知恵を伝えていくとともに、それを現代の生活で忠実に再現するのは難しいこともあり、時代に合った道具や家電などを使いこなして、いかに理に適った料理が作れるかを追求し続けたいと思っています。料理は科学だという観点から説明するとみなさんにもわかりやすいようで、教室やメディアでは根拠のある料理を伝えていきたいです。また、季節の素材の味を活かすため、調味料をたくさん使わずというやり方も変わりません」
その上で、このやり方がすべてではなく、それぞれの料理家は自分の個性でやっているものと話す松田さん。松田さんが料理の道に入った頃は師弟関係が中心で横のつながりがなく、他の料理家たちがどんな活動をしているのかを知ることが難しかったといいます。また、資格がなく、定義があいまいだからこそ、安易に取り組むのではなく自身を磨いていくことが大切なようです。
「料理家や料理の先生には資格も免許もありませんが、料理だけでなくできるだけ多様なことを身につけられた方がいいかと思います。料理は文化のひとつですが、お茶やお花、所作を学ぶのも大切なこと。料理家なら、せめて箸を正しく持っていただいたうえで、活動してほしいですね。アシスタントたちを見ていて、好奇心があって、こちらが伝えたことをきちんとこなそうと努力する姿勢がある子は成長します。また、人の話がいかに聞けるかはとても大切。初めは技術が伴わなかったとしても、反復練習を行うことで変わっていきますよ」

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撮影/福田喜一 取材・文/江原裕子

松田美智子(マツダ ミチコ)
料理家。東京生まれ、鎌倉育ち。テーブルコーディネーター、女子美術大学講師、日本雑穀協会理事。女子美術大学卒業後、ホルトハウス房子氏に師事して各国の家庭料理を学び、日本料理や中国家庭料理も習得。1984年にパーティプロデュース、ケータリングなどを行う専門会社を設立し、10年間活動。その後、1993年より「松田美智子料理教室」を主宰。メディアや企業へのレシピ提供のほか、著書の執筆、食にまつわる商品開発などにも携わる。

松田さんがプロデュースした第一号の調理器具がこちらの『自在鍋』。大きさ、深さ、形、さらには持ち手の角度まで、松田さんの理想を形にした優秀アイテム。「道具の素材は、自然に還るものが一番だと思っています。なかでも鉄の調理道具は、耐久性や熱伝導の良さに加え、素材の味が立ち、鉄分も摂ることができます」

ご愛用いただいている貝印のアイテムが、どんな種類のパンでも断面を美しくカットできるブレッドナイフ「パマル ウェーブカット」(貝印)。4種類の刃の形状を取り入れた貝印オリジナル刃形状で、かたいパンもやわらかいパンもスムーズに切ることができます。

基本調味料のさしすせそ(砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ)を中心に、調味料とそれを使ったレシピを紹介する『調味料の効能と料理法:おいしさの決め手はこのひとさじにある』(誠文堂新光社)。料理をもっとおいしく仕上げるための調味料の効果的な使い方が、科学的な視点で紹介されていて、松田さんの料理哲学も学べます。