
料理は小さな文化
大和撫子のようなたたずまいに筋の通ったスタイルで、多くの女性たちのあこがれの料理家として、長く活躍されてきた松田さん。その料理哲学について、あらためて尋ねてみました。
「料理をおいしくするために先人たちが積み重ねてきた素晴らしい知恵を伝えていくとともに、それを現代の生活で忠実に再現するのは難しいこともあり、時代に合った道具や家電などを使いこなして、いかに理に適った料理が作れるかを追求し続けたいと思っています。料理は科学だという観点から説明するとみなさんにもわかりやすいようで、教室やメディアでは根拠のある料理を伝えていきたいです。また、季節の素材の味を活かすため、調味料をたくさん使わずというやり方も変わりません」
その上で、このやり方がすべてではなく、それぞれの料理家は自分の個性でやっているものと話す松田さん。松田さんが料理の道に入った頃は師弟関係が中心で横のつながりがなく、他の料理家たちがどんな活動をしているのかを知ることが難しかったといいます。また、資格がなく、定義があいまいだからこそ、安易に取り組むのではなく自身を磨いていくことが大切なようです。
「料理家や料理の先生には資格も免許もありませんが、料理だけでなくできるだけ多様なことを身につけられた方がいいかと思います。料理は文化のひとつですが、お茶やお花、所作を学ぶのも大切なこと。料理家なら、せめて箸を正しく持っていただいたうえで、活動してほしいですね。アシスタントたちを見ていて、好奇心があって、こちらが伝えたことをきちんとこなそうと努力する姿勢がある子は成長します。また、人の話がいかに聞けるかはとても大切。初めは技術が伴わなかったとしても、反復練習を行うことで変わっていきますよ」