
「もっと軽く」を肌で理解できたモナコ研修
「古都華いちごのパフェ~冬~」(1800円)。奈良県の中井農園の「古都華」いちごとレアチーズクリーム、古都華のソルベ、牛乳と練乳のソルベなどを重ねた冬のフルーツパフェ。
吉田さんの現在のデザートづくりのこだわりを伺いました。
吉田さんがもっとも力を入れているのが、さまざまなテクニックを使って旬の果物の特徴を引き出したパフェです。取材をした12月は、奈良県のブランドフルーツをふんだんに使った「古都華いちごのパフェ~冬~」です。
「パフェは、『もう少し食べたいな』と思わせながら食べ切ってもらうことを考えています」と吉田さんはいいます。たしかに、「SPROUT Café さくら坂」のパフェは、クリームなどの甘さよりも、古都華がもつバランスのよい酸味と甘味、触感がストレートに感じられるので、食べても体重が気になる“罪悪感”がありません。スルスルっと食べてしまいます。じっさい、ランチタイムに食事に600円でつけられるミニパフェは、男女問わず注文する人が多い。パフェなのに絶妙な「軽さ」が、吉田さんがつくるパフェの特徴です。
「クッキーをしっかり焼き切って軽くしたり、バターや砂糖の量をほんとうにわずかに調整したり。間に食べ飽きさせないムースをはさんだり。ほんの少しの差に気を配れるようになったのは、ロブションでの経験のおかげです」
ギッチリと素材が詰まっているよりも、ところどころ空間を作ることで、食中・食後の軽さが生まれています。
吉田さんが「ほんの少しの差」を感じられるようになったのは、ロブションに勤めて10年目頃に実現したモナコでの研修だったといいます。
それまで師ジョエル・ロブション氏にデザートを試食してもらうと必ず、「重い重い。軽く軽く」と言われてきました。そんなときに、モナコにある「ジョエル・ロブション」で、シェフパティシエを務めていた金井聡美さん(現在は独立し、ボルドーの「Pâtisserie S.」のシェフパティシエ)と仕事をする機会を得ます。
金井さんは、パリの名店「ピエール・エルメ」や、東京、ニューヨーク、台北のジョエル・ロブションなど世界各地の名店で経験を積みモナコに来た、国際経験豊かなパティシエールです。
「わずか10日間の研修でしたが、金井さんとの仕事のなかで、わずかな差、砂糖何グラムでは測れない高いレベルの感覚を肌で知れた。言葉やレシピで伝わらないことを体験できたのです」
フランス研修以降、自分の中で「わかった感じ」が生まれたと吉田さんはいいます。以降、ロブション氏が来日した試食会でも、それまで厳しかった師から「いいお菓子をつくれるようになったね」と言われるようになったそうです。
「和栗のモンブラン」(1000円)。熊本県産の栗のクリームに、サクサクのメレンゲと生クリームを合わせた定番の生菓子です。