
暦の上では春を迎え、3月は年度末、そして4月からの新生活と、何かと気忙しい毎日。疲れがたまりやすいこの時期を元気に乗り切るために、家庭で作れる薬膳料理を習いましょう。
おいしく食べて、体調を整える
体の不調をきっかけに、食生活を見直そうと考えたことはありませんか? 特に体調を崩しやすい季節の変わり目は、なんとなく体がだるくて、重い。さらには、冷え、むくみ、肌荒れなど、体に関する悩みを抱えている人は、少なくありません。そこで今月は、薬膳料理研究家の谷口ももよさんに、「カレー風味のスパイシー参鶏湯」を教えてもらいました。
谷口さんが提案するのは、おいしくて体にいい薬膳。効能にとらわれて味が二の次になりがちなヘルシー料理とは一線を画す、味にも見た目にもこだわりのあるメニューが人気です。その著書は、薬膳の難しそうなイメージを覆す再現しやすいレシピ、専門的すぎないわかりやすい解説、部屋に置いておきたくなる魅力的な装丁で、世の女性たちと薬膳の距離を一気に縮めてくれました。著書のうち、『5色のやさいでからだを整えるベジ薬膳』(キラジェンヌ)は、料理本界のアカデミー賞とも呼ばれる「グルマン世界料理本大賞」で2017年ダイエット料理部門、『身近な10の食材で始める 薬膳ビューティーレシピ』(講談社)は2015年健康料理部門で、それぞれグランプリを受賞しています。
「参鶏湯は、韓国では夏バテにいいとされているように、疲れた体を癒してくれるメニュー。今回は、丸鶏ではなく骨の部分に栄養のある鶏手羽元を使い、手軽に作れるようにアレンジしました。また、だしをとった干ししいたけは、薬膳では疲れにいいとされ、栄養学的にもビタミンBが豊富。しいたけも戻し汁も、丸ごといただきます」
今回使った、食材がこちら。左上から時計回りに、体と肌に潤いを与える「白きくらげ」、疲れや貧血に効く「なつめ」、消化を促す「クミン」、代謝をアップさせる「しょうが」、抗菌作用があって気や血のめぐりを良くする「にんにく」、血液に栄養を与え、目の疲れを改善し、肌に潤いをプラスするなど美容効果の高い「クコの実」、体を温めて気のめぐりや代謝を良くする「五香粉」に含まれる「スターアニス」と「シナモン」、数十種類ものスパイスやハーブがミックスされ、体を温め、その香りで気の巡りをよくする「カレー粉」。
おでんの具として人気の巾着を、手作り。中身は、鶏ひき肉、餅、うずらの卵で、鶏肉には下味をつけ、うずらの卵はあらかじめ茹でておきます。「薬膳では、鶏肉、もち米、あとからスープに入れる調味料の味噌なども、体を温める温性の食材です」
手羽元には、にんにくとしょうがのすりおろし、カレー粉、クミンパウダー、五香粉など、体にいいスパイスをもみ込んでおきます。「スパイスも食材も、効果を期待するあまり、あれもこれもとたくさん使えばいいわけではありません。きちんと効果を得るには組み合わせが重要ですし、おいしく食べるには味のバランスも大切です」
火の通りにくいものから順番に鍋に加え、煮込むだけで作れる「カレー風味のスパイシー参鶏湯」。体にいい料理が、切る、焼く、煮込むといった基本の調理テクニックでできるうれしい一品です。食材を揃えるのが大変かもしれませんが、特にスパイス類は一度使ってその魅力を覚えると、さまざまな料理に応用したくなるので、この機会に揃えてみるのもおすすめ。
「ホールのスパイスをその都度挽いて使うのがベストですが、ご家庭では市販のパウダースパイスで十分。ただし、パウダーは揮発性が高いので、開封後は半年以内に使い切ってください。またホールを挽くのが面倒なら、そのままポンと鍋に入れ、風味がついたら途中で取り出せばOKですよ」