日本人が愛してやまない国民食のひとつ、「カレー」。なるべく時間をかけずに作りたいおうちのカレーもプロが作る本格カレーも甲乙つけがたく、正解がたくさんある懐の深いメニューです。今月は、カレーのスペシャリストとして絶大な信頼を集める水野仁輔さんに、残暑をおいしく乗り切れるスパイスたっぷりのレシピを伝授してもらいました。
ちょっぴり刺激的な辛さと圧倒的な深みのある旨さ
日本を代表する国民食のひとつ、「カレー」。そんなカレーに関するマニアックな知識と豊富な食体験で、日本におけるカレー研究の第一人者として名を馳せる水野仁輔さん。2017年に、本格カレーのレシピつきスパイスセットを定期頒布するサービス「AIR SPICE」を立ち上げ、またこの春は初の料理エッセイ集『わたしだけのおいしいカレーを作るために』(パイ インターナショナル・刊)を発売するなど、話題に事欠かない水野さんに、とっておきのレシピについて尋ねてみました。
「おいしいカレーを作るのはそれほど難しくないんです」。長年の研究の結果、カレーをおいしくする食材や調理法をほぼ特定している水野さんは、その要素をひとつのカレーに加えれば加えるほどうま味は増していくと話します。ところが、うま味を司る要素をたくさん加えるのが正解とも言い切れないのが奥深いところ。
「味覚は人それぞれなので、おいしいカレーは人によって違います。僕は、口に入れたときのインパクトはそれほど強くないけれど、時間が経つと共にじわじわと味わい深さが増すような一皿を作りたいと思っています」
職業柄、「一番おいしいカレー」について問われることが多いといいますが、年齢や性別、味覚の異なる万人がベストだと感じるカレーをひとつに絞るのは困難。そこで、カレーのスペシャリストである水野さんがおいしいと考えるカレーについて徹底的に掘り下げて、そこから自分だけのおいしいカレー作りのヒントを得てもらおうと発刊されたのが前述の料理エッセイ『わたしだけのおいしいカレーを作るために』です。
水野さんはこの著書の中で、おいしいカレーを作るためのテクニック論を展開。巻末には、その理論を形にした、2018年春の時点で最もおいしいと考える「水野仁輔だけのおいしいカレー」のレシピを詳しい解説付きで掲載していて、今回はそのマニアックなレシピを特別に教えてもらいました。
また、使うスパイスも、カルダモン、シナモン、コリアンダー、クミン、チリ、パプリカ、フェンネル、ブラックペッパー、ターメリックと身近なものばかり。スパイスを揃える前にまずはお試しで作ってみたいという人は、このレシピ用の使い切りタイプのスパイスセットも購入できます。(※詳細は、本特集の巻末「関連商品」の項目参照)
おいしいスパイスカレー作りのポイントをマスター!
火が通りにくいホールのスパイスは最初に鍋に入れ、油と合わせて熱し、それぞれの香りをじっくり引き出します。カルダモンがくすんだ色になって、ぷっくりと膨らんだらOK。次の食材を加えていきましょう。
玉ねぎは、焼き色がつくまで中火で10分ほど炒めます。あめ色にする必要はなく、玉ねぎの水分を飛ばし、甘味と香味、うま味を引き立てるのがポイント。ここで塩を少量加えることで玉ねぎから水分が出て、短い時間で炒め上げることができます。