
自分の志向を見つめ、「流し」のスタイルにたどり着く。
そこから、友達になったカレー屋とコラボしたり、店のメニュー開発を手伝ったりと、カレー活動の幅を広げて行く阿部さん。大きな転機となったのは2017 年の1月から4月にかけて、下北沢で期間限定のカレー店を開いたことでした。
「平日、木曜日の午前中までは人事とウェブの仕事をして、そこから仕込みをして、週末はカレー屋という生活でした。大変だったけど、今より若かったから頑張れた(笑)。そこで、カレーを提供すること自体は楽しかったのですが…」
ふと、自分はお店をやるのには向いていないな、と気づいたのだと言います。折りしも、世間はお花見の時期。
「みんなカレーを食べに行くより、公園でお花見しているんですよね。お店で余ってしまったカレーを見ながら、だったら公園にカレーを売りに行きたいな、以前の自分ならそうしていたな、って思ったんです。ひとところにいて、お客さんが来るのを待つということが性に合わないんだと気づきました」。店を持つのは向かない。それなら“流し”になろう、と阿部さんは決めます。
「違う業態のお店やイベントに呼んでもらって、カレーを作って。知人のつてをたどりながら、東京を中心に活動し始めました」ユニークな試みはすぐに注目され、雑誌『dancyu』で紹介されたり女性の人生にフォーカスするCX系のドキュメント番組「セブンルール」にも出演するなど、メディアへの露出が続きます。
「ここから全国からの問い合わせが増えて、いろいろなところに出向いてカレーを作れるようになりました。それまでは東京が中心でしたが、ようやく本格的に“流せる”ようになったんです(笑)」そうして2018年に立ち上げたのが、冒頭で紹介した拠点「kitchen and CURRY」でした。
SNSでの発信が、さまざまな出会いの源に。
畑違いの職業から料理の世界に飛び込み、着実にフィールドを広げている阿部さん。その行動力は何に支えられているのでしょうか?
「一番はただただカレーが好き、という気持ちですが……。でも、カレーでつながっている人同士は、仲良くなりやすい。そこから話が広がっていくことが多いのですが、そこではSNSが果たす役割がとても大きいと思います。例えば、カレーフリークの方がSNSで見つけた私のカレーをインスタに挙げてくれて。そこから認知してくれる人が増えました」
インスタグラムやツイッター、フェイスブック、ウェブサイトで自分のコンテンツを発信することは大事だと言います。ちなみに左記の4種をすべて使っているという阿部さん、その使い分けは……。
「メディアによって見ている方の層が違うので、挙げる内容も少しずつ変えています。インスタグラムは『and CURRY』の活動と美味しかったカレー屋さん、愛猫のこと。ツイッターはもう少しカジュアルに、お店の情報発信や好きなアイドルのことをつぶやいています。フェイスブックは純粋に『and CURRY』の活動のみを。ウェブサイトは全体をリンクさせ、あとは日記的に文章を書く場にしています」
好きなものを吸収し、自分を通してアウトプットしていく。そのたゆまぬ姿勢が活動に加速を与え、さらなる良き出会いをもたらしているのでしょう。