外国人向けと日本人向けのふたつのクラスを設定
東京・代々木上原の閑静な住宅街に佇むマンションの一室。そこが今回お邪魔する和菓子スクール「MissWagashi」です。小田急線の急行が停まる代々木上原駅から徒歩で10分程度という好立地。帰国子女でバイリンガルということを生かして主宰者の入江麻衣さんが開催している外国人向けの日本料理・和菓子教室は、口コミで生徒は引きも切らず。日本人向けの和菓子教室も、都内に和菓子クラスが少ないことも手伝い、こちらも順調に集客できているといいます。
現在、外国人向けと日本人向けのクラスは、割合でいうと7対3。そう、外国人向けのクラスのほうが多いのです。このところ訪日客数はうなぎのぼりで、都心の繁華街で外国人を見ない日はありません。しかし、刺激的な東京も、意外に英語による体験型観光名所は少ないもの。そんな時に季節を映した美しい和菓子を作ってみたいというニーズが生まれるのも道理。それに応える形で入江さんの教室は注目を集め、体験した人がSNSで発信、口コミでどんどんつながるというハッピー・ループがすでに出来上がっています。
参加した外国人の母国語は英語、中国語、韓国語のみならず、アジア各国から欧州にいたるまでまんべんないとのこと。まさにSNS時代の教室のあり方だといえそうです。
作業台を囲んで、全員が順に手を動かすレッスン
取材したレッスンは、日本人向けの和菓子クラス。4名の生徒と共にキッチンの作業台を囲んで行われます。レッスンの進め方は日本人、外国人共に同じですが、内容が変わります。日本人向けは様々な種類の和菓子の中から季節ごとにメニューを変えて2種類。外国人向けは練りきりだけにし、美しい色合いと四季に応じたデザイン性の高いものを提案することにしているそうです。
全員がテーブルに着席したらまず、2種類の和菓子についての説明をします。どんなお菓子なのか名前や作り方について、季節のこと、今回の材料のこと、そしてこれからの手順など。一通り説明を終えたらキッチンの作業台に移り、いよいよ作業開始。
今回は2種類とも寒天を使用した和菓子がテーマ。ひとつは桜の塩漬けを浮かべた羊羹と、桜あんを包んだ練り切りです。家庭でも扱いやすい粉寒天を使いますが、棒寒天や糸寒天などを使う際の注意や粉寒天を選んだ理由についても説明されます。また、鍋を火にかける前や、火にかけた後の重要なポイントについても、次々に入江さんが説明を加えていきます。
「はい、では鍋に粉寒天を入れてください」という指示に従って粉寒天を入れるのは生徒。手の動かし方を見て先生がアドバイスを加えるなどコツがしっかり伝えられていきます。完全な実習形式でなくとも、手を動かす機会があればより覚えやすく、小さなキッチンでもレッスンの満足度を上げる工夫に納得です。
出来上がった桜羊羹を冷蔵庫で冷やし固めている間にもうひとつのレッスン、練りきりに移ります。こちらは作業台で生地を作った後にテーブルに移り、手作業で一人2個ずつ作ります。
和菓子ならではの道具、三角棒の使い方もここで教わり、取り組みます。「先生のようにきれいにできない!」という声が上がりますが、「大丈夫です!よく見ないとわからないから(笑)」と優しく励ましてくれる入江さん。この一言でさらになごやかな雰囲気になりました。
作った和菓子はおみやげ用の箱に入れて持ち帰り、試食は入江さんがあらかじめ作っておいたものをいただくスタイル。お茶をいただきながら、ほかの季節に作る場合や組み合わせについてなど、さらに教えてもらいつつ、いつの間にか雑談に花が咲くような、なごやかなティータイムでレッスン終了です。
桜の季節ならでは、春にマストの和菓子たち
今回は春先の取材だったこともあり、桜の塩漬けを透明な錦玉羹に浮かべた層と白あんの2層が美しい羊羹と、薄青のあんと白あんで桜あんを包んだ練りきりの2種を制作。
生徒は羊羹を固めるための流し缶に興味津々。「初めて見ました!」という声も上がる中、「使う容器はなんでもいいんです。プリンカップで作ってもかわいいですよ」というアドバイス。自宅でも作れるのがうれしいところ。
薄青と白の2色のあんで中に入れた桜あんを包んだ練りきり。やさしく形を壊さないようにあんを伸ばしていくのが最初の難関ポイント、三角棒で均等に筋を入れていくのが次の難関ポイント。さらに筋をつけ終わった練りきりの形と線を保ったままお皿に移すのが3つ目の難関ポイント。「難しい!」と声が上がります。