イタリアの家庭料理と暮らしを学べる
小田急線経堂駅から徒歩約7分という落ち着いた場所にある、イタリアの家庭料理を学べる料理教室「Cucina Italiana Via Frua(クッチーナ イタリアーナ ヴィア フルア)」。主宰の緒方美智子さんは、イタリア・ミラノに6年間の滞在経験があり、そのときに現地の文化や料理を学んだといいます。
「意外に思われるかもしれないのですが、イタリアの家庭料理は簡単に作れるシンプルなもの。盛り付け次第でおもてなし料理にもなります。“本物のイタリア”をみなさんに知ってほしくて」と、話す緒方さん。レッスンを通して、自身が体験した現地の食文化や暮らしを伝えるのがこだわりです。
緒方さんは毎年イタリアに足を運んで、郷土料理や旬の料理を学ぶのはもちろん、食材の生産現場を訪れているといいます。ちょうどこの取材の2週間前にも、南イタリアを旅してきたばかり。レッスン前にメニューと手順の説明をしながら、現地で食べておいしかったパスタの話など、旅で触れた食文化の話を聞かせてくれました。オレンジとブルーというイタリアならではの色合わせでコーディネートされたテーブルに着席した生徒たちは、興味津々に聞き入っていました。
また、レッスンではイタリアの家庭料理はもちろん、テーブルコーディネートを学べるのも魅力のひとつ。緒方さんはテーブルスタイリングやフードスタイリングの仕事も手掛けていることから、テーブルコーディネートや料理の写真をインスタグラムなどSNSで発信しています。そういった写真から緒方さんのセンスに惹かれ、「テーブルコーディネートを学びたい」、「写真を上手く撮れるようになりたい」と参加する生徒が多いそうです。
「私にもできる!」と思わせてくれるレッスン
レッスンでは毎回、アンティパスト(前菜)、プリモピアット(パスタやリゾット)、セコンド(肉料理や魚料理)、ドルチェの中から3~4品を作ります。この日のメニューは、「ズッキーニのペスカーチェ」、「ジャガイモのインサラータ」、「スパゲッティ アル ポモドーロフレスコ」といった南イタリアの料理に、「ペスケ リピエネ アル フォルノ」という桃を使った北イタリアの郷土ドルチェの4品。普段手に入りやすいものを中心にしながら、スパゲッティやチーズなどイタリアの良質な食材も使っていきます。
先生がポイントを説明しながら、生徒も手を動かす実習スタイルでレッスンは進行します。緒方さんはドルチェの下準備をしながら、「イタリアの飲食店でペスケ(桃)のスイーツを注文しようとしたら、ペッシェ(魚)と言い間違えてしまって…」というイタリアでの笑いのエピソードを披露し、レッスンは一気に和やかな雰囲気に。そのほか、石造りの建物が多いイタリアでの暮らしにまつわる話など、食にとらわれず言葉や文化についての話を聞かせてくれるうちに、次々と料理が出来上がっていきます。
アンティパストの「ズッキーニのペスカーチェ」。ペスカーチェとは、魚や野菜を揚げて南蛮漬けにしたナポリの郷土料理のこと。今回は薄くスライスしたズッキーニを、たっぷりのオリーブオイルを注いだフライパンで揚げ焼きにしていくのがポイント。きつね色に焼き上がったらホワイトバルサミコをふりかけ、ミントを加えて爽やかな香りに仕上げます。冷蔵庫で4~5日保存が可能。
2皿目のアンティパスト「ジャガイモのインサラータ」は、ジャガイモや塩漬けケイパー、ミニトマト、フェンネルシードといった具材をオリーブオイルと塩こしょうのみで味付けしたシンプルなサラダ。この日はシチリア産の塩漬けケイパーを使用。家庭で馴染みのない素材でも、「塩漬けケイパーの塩は、手で払い取ってから使うといいですよ」と、扱い方を教えてくれました。
プリモピアット「スパゲッティ アル ポモドーロフレスコ」では、トマトソースの作り方を解説。真っ赤に熟したトマトを用意して、玉ねぎ、にんにくと一緒に煮詰めていくというもので、手順はいたってシンプル。「簡単だから家でも美味しいトマトソースが作れる!」と生徒たちも大喜び! さらに、乾燥パスタの産地である南イタリア・グラニャーノのパスタを使用し、本場の味に仕上げます。
ドルチェの「ペスケ リピエネ アル フォルノ」。半分に切った桃の中央の果肉を取り除いてくぼみを作り、イタリアのお菓子「アマレットビスケット」と砂糖、ココアなどを合わせたものを流し込んでオーブンで焼き上げます。焼き上げる際にマルサラ酒をかけるので、甘く良い香りになります。
アンティパストの2品が出来上がり、プリモピアットとドルチェの調理も一段落したら、生徒は着席して試食します。スパゲッティの仕上げには、緒方さんが南イタリアを訪れた際に買ってきたというパルミジャーノチーズを削ってくれました。本場の味わいに、生徒たちも盛り上がります。
先生はどんな人?
ご主人の転勤で、イタリアに滞在していた緒方さん。現地で暮らす中でシェフ、ソムリエ、各地のマンマから料理や文化について教わりました。レッスン中は自身が体験したイタリアを少しでもたくさん生徒に伝えたいと、料理の解説をしながらさまざまなお話をしてくれます。
帰国後も年に一度は必ずイタリアを訪れ、現地の情報をアップデートしています。試食の際はイタリア・トスカーナ産のロゼワインをサーヴしながら、「私が住んでいた頃、ロゼはイタリアではほとんど飲まれていませんでしたが、今は流行っているんですよ」と、最新のトレンドを教えてくれました。
また、緒方さんは百貨店や展示会で大手企業ブースのテーブルスタイリングを、Webサイトなどでフードスタイリングを手掛けています。レッスンのテーブルコーディネートには生徒たちが真似しやすいような工夫が凝らされ、料理とスタイリングを通してイタリアの家庭の食を学ぶことができます。
生身の経験をサービス精神旺盛にたっぷりとお話してくれる人柄や、“本物のイタリア”を常に追い求める熱心さが、生徒から支持されているようです。