自然に会話が生まれる、魅力あふれるお菓子を学ぶ
東京・神楽坂で、フランス菓子をベースにしたお菓子教室を主宰する料理家の加藤里名さん。アトリエでの定期レッスンのほか、メディアや企業などへのレシピ提供、ワークショップやイベント開催など、お菓子を軸に幅広く活動しています。
食の仕事に関わるご両親に連れられ、子どもの頃からたびたびヨーロッパを訪れていたという加藤さん。身近には、いつもヨーロッパの食や文化がありました。大学卒業後、一度は一般企業に就職するも、同じ時間を過ごすなら大好きなお菓子に触れていたいと、働きながらフランス菓子を学びはじめます。25歳で「ル・コルドン・ブルー・パリ」に留学。パリの名パティスリー「ローラン・デュシェーヌ」で修業したのちに帰国し、2015年に「洋菓子教室“シュクレリ”」を立ち上げました。
レッスンは1回完結型で、個人の製菓レベルや興味で選べる多彩なクラスが用意されています。テクニックや素材のことはもちろん、お菓子にまつわる歴史や文化も伝え、よりお菓子に興味を持ったり楽しんだりしてもらうことを心掛けていると話す加藤さん。今回は、数あるレッスンの中でも特に人気が高く、毎回募集開始からわずか2時間で満席になるという「クッキー缶レッスン」にお邪魔しました。
レシピから歴史まで、お菓子作りを多角的にレッスン
1回のレッスンで7種類のクッキーの作り方が学べる、盛りだくさんのレッスン。生地作りから焼成、さらにはラッピングまで、3時間半のレッスンですべてが体験できるとあって、人気の高さも頷けます。
まずはレシピが配布され、材料や作り方の説明からレッスンがスタート。材料を混ぜる順番から、合わせるときの温度、混ぜ方、混ぜる回数など、生徒たちは加藤さんの話に熱心に耳を傾け、しっかりメモをとっていました。この日は、思い通りのかたさや食感に仕上げるための2つの生地作りを行いましたが、詳しい説明や作り方のポイントはA4用紙1枚にまとめ、レシピと一緒に配布。一度聞いただけでは完全に理解するのが難しい製菓理論を、あとから何度も読み返せるようにという配慮がなされていました。
説明が終わると、いよいよ実践へ。デモと実習を交えたレッスンは、てきぱきと進行していきます。早すぎてついていけないということがないように、生徒一人一人に目を配る加藤さん。つまずきがちな作業や仕上がりの要となる工程は、ひときわ丁寧に指導を行っていました。決められた時間の中で、生徒にできるだけ多くのことを得て帰ってもらうため、何度もレッスン内容を見直し、事前に時間をかけて準備をレッスンに臨んでいることが見てとれます。
親しみやすいけれど、特別感のあるお菓子を伝える
最初はどれも同じように見える材料も、混ぜ合わせて生地を作り、型を抜いたり、絞ったり、粉糖やパウダーを振ったりとステップを踏んでいくうちに、それぞれが個性豊かなクッキーに。
絞り出しクッキー「サブレヴィエノワ」、さらにチョコレートを挟んだ「サブレヴィエノワ チョコレートサンド」、サクほろ食感が魅力の「レモンとポピーシードのショートブレッド」、米粉で作る「いちごとホワイトチョコレートのスノーボール」、軽い食感に焼き上げた「ジンジャークッキー」、カリッと香ばしい「アマンドショコラ」、サクサク感がクセになる「アーモンドのメレンゲ」の、7種類のクッキーが完成しました。
そのまま並べておいてもかわいいのですが、缶にぎっしり詰まったクッキーを見ると、ますます満足感と高揚感に包まれるのがスタイリングのパワー。作るだけでは終わらないこの演出には、子どもの頃からヨーロッパ文化に触れてセンスを磨いてきた加藤さんらしさが詰まっています。
全国から集まる生徒の半数は、SNSなどで加藤さんの作るお菓子を見てビジュアルに惹かれ、レッスンを申し込んだという人たち。また、残りの半数は、加藤さんのお菓子を食べる機会に恵まれてそのおいしさに感動し、教室を探し当てた人たちだそうです。
みなさんも、見た目と味の両面から多くの人を魅了するすてきなお菓子を習いに、東京・神楽坂まで足を運んでみませんか?
先生はこんな人
ヨーロッパを中心に海外を定期的に訪れ、現地のお菓子の最新トレンドに触れながら、常においしいものとかわいいものにアンテナを張っているという加藤さん。フランスで学んだ本物のおいしさを追求しながら、モダンなセンスとアレンジ力で洗練された印象に仕上げたお菓子を得意としています。2019年春には、初のレシピ本を出版予定。