特集記事

快適に他人と関わる 人間関係ノウハウ

スキルアップ
2018年08月14日
料理やお菓子の教室主宰者、スタイリストやフォトグラファーなど、フリーで働いている個人事業主にとって仕事の要となるものが人間関係。気持ちよく仕事をしながら、自分の立場を自ら守らなければならないというのは、例え社交的な人であっても簡単なことではありません。さらに昨今は、SNSなどのソーシャルメディアの影響で、自分では気を付けていても人間関係の厄介ごとに巻き込まれてしまう危険性も。フリーで働く人が快適に他人と関わるノウハウをまとめました。

人間関係を壊すSNSの例① コメント欄の書き込みには注意

フェイスブックやツイッター、インスタグラムなど、不特定多数の人と気軽にコメントや意見を交わせるのがSNSの良いところですが、逆に「誰が見ているかわからない」ということは、肝に銘じておかなければなりません。
東京で料理教室を営むSさんはある日、生徒の一人がフェイスブックでアップした投稿に目をとめました。「レッスンに参加して楽しかった!」といううれしい内容を料理写真と共にアップしたものでしたが、社交的で明るい生徒なので、多くの友人たちからコメントがついていました。その中に「おいしそう! でも、私が通っている料理教室の●●先生の方が、この手の料理だったら得意だよ。今度一緒に行かない?」というコメントが。
生徒にもコメントをつけた友だちにも、悪意はありません。しかし、これを見たSさんはとても悲しい気持ちになりました。しかも●●先生は偶然ながらSさんの知り合いでもあり、こちらとの仲まで複雑に。以来、どんなに仲良くなっても、生徒のフェイスブックは必要以上に見ないことを徹底しているといいます。

人間関係を壊すSNSの例② 悪意なく模倣された

カジュアルながらアイデアが楽しくて、誰でもすぐに作れる家庭料理を教えているフードスタイリストのNさんは、インスタグラムにも自身の料理を多数投稿してきました。徐々にフォロワー数も増えてきて、今ではインスタグラムのDM(ダイレクトメッセージ)を通じて、メーカーやメディアから仕事の依頼がくることも。そんなある日、友人から、最近発売になったばかりの料理本のことを知らされました。
著者は、料理家を対象にしたイベントで一度話したことのあるフードコーディネーターの女性。感性が似ていることで意気投合し、その後は互いのSNSにコメントをつけ合うなどして、楽しい関係を築いてきた仲です。
が、そんな彼女が出した新刊の料理本には、これまでNさんがしばしばインスタグラムで投稿してきたさまざまな料理のアイデアが満載。あっけにとられ、抗議したい気持ちにかられましたが、これまで散々コメント欄で「素敵! これ真似してもいいですか?」「どうぞどうぞ」というやりとりを繰り返してきただけに、まさかこんな形で真似されるとは思ってなかったとも言い出せず、以来、その友人だけでなくインスタグラムの投稿も止めてしまうことに。せっかく仕事が舞い込むようになっていたので残念でなりませんでしたが、以前と変わらないモチベーションを保って投稿することが難しく、苦渋の決断でした。

フリーで働くなら「SNSは人間関係を築く商売道具」と心得て

2つの例を挙げましたが、厄介なのは、いずれの件でも「誰も悪意を持っていなかった」ということです。若干マナー違反と思えることでも、法律違反というわけではなく、対応のしようがない例でした。が、人間関係にはヒビが入り、仕事の可能性まで失ってしまった人も。
「私も気を付けよう」と思うくらいでは、まだ意識が足りないかもしれません。今後、フリーの仕事が軌道にのって多方面で活躍するようになれば、ますます知らない人々に自分の存在が知られ、注目されることになります。そうなった時の対応策として今から考えておかなければならないこと、それが「SNSはオフィシャルなものである」と心得ること。あなたに代わって無給で働いてくれる広報宣伝部長であるといっても過言ではありません。スムースで快適な人間関係や仕事での人脈を作ってくれるような価値のあるSNSアカウントに育てるには、ここで“本当の自分”などさらけ出す必要はないのです。
料理教室を主宰するフードスタイリストを例にとるなら、ビジュアルセンスに自信があるならSNSの中でもインスタグラムを使うのがおすすめ。そしてそこに掲載する内容は、なるべく食に関することを挙げるのが、結局は正解なのです。
ショッピングの戦利品、家族の動向、憤っている社会現象、友人の活動など、一人放送局のような勢いで何でも公開するのではなく、「クライアントがこれを見たら、仕事したいと思ってくれるだろうか?」「この料理やスタイリングをアップしたら、新しい生徒さんが来てくれるだろうか?」、そんなことを考えて投稿内容を選ぶとよいかもしれません。それでも、心無い書き込みにハートを砕かれたり、模倣されて悲しくなったりする可能性はゼロにはなりません。しかし、「仕事の一環として、ビジネスライクでスムースな人間関係を作るためにSNSを続けているんだ」という自覚があれば、多少はそういった危険性も防げるでしょう。

1 2 3 4

写真/Unsplash