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「正しい自己紹介」の仕方を身につける

スキルアップ
2018年06月12日
オンでもオフでも、初めて出会う人との間で欠かせない通過儀礼といえば、自己紹介です。カジュアルな雰囲気の中でなら誰とでもすぐに打ち解けられるという人も、ビジネスシーンで、初対面の仕事相手とのオフィシャルな自己紹介となると、途端にひるんでしまうこともあるのでは? そんなことにならないためにも、「ここだけは外せない」というビジネスの場で効果を発揮する「大人の自己紹介の仕方」について考えてみましょう。

「正しい自己紹介」の方法を身につける〜ビジネスマナー講座④

基本③ 「やる気」はあって当たり前。それを裏付ける「具体性」が生きる

自己紹介でまずは感じ良く自分の名を伝え、シンプルな肩書きと共に挨拶したら、「主にどんなお仕事をなさっているんですか」「これまでにどんなことをなさってきたのですか」と聞かれることが多いものです。そんな時こそ、チャンスです。例えば、次に紹介する料理家の自己紹介ですが、実は2つとも同じ人の内容です。あなたがもし仕事を依頼する料理家を探しているなら、どちらの人に頼みたいですか?
1)料理教室を主宰している○○○と申します。誰でも気軽に作れて美味しい、旬の素材を生かした家庭料理を心がけています。お伝えする料理はいつも好評で、生徒さんからはスタイリングや食材選びも参考になると言っていただきます。自らのブラッシュアップのために、器店や市場を巡ったりするのが大好きです。
2)1回5名までの少人数家庭料理教室を営んでいる○○○と申します。1回のレッスンで3品と、教える料理点数は少なめなんですが、いくらでも応用が効くように工夫したレシピが好評をいただき、2年前の教室スタート時は20名だった生徒が、今では100名に増えました。スタイリングも好きで、参加できなかった生徒さんも真似できるようにインスタグラムで器のコーディネートを公開しているのですが、そちらでも思わぬ好評をいただき、生徒さん以外の方も含め1万人のフォロワーさんにご覧いただいています。料理以外ではカメラが好きで、写真の教室に1年ほど通っています
いかがでしょう。おそらく、いまどきのメーカーや広告代理店、出版社などが料理の仕事を発注するとしたら、後者を選ぶケースが多いのではないでしょうか。同一人物の話であるのに、ここにどんな違いがあるのでしょうか。その一つが「具体性」です。
(1)の場合は、素直で耳障りのいい言葉を選んで教室を紹介しているのですが、少し俯瞰した気持ちで読んでみてください。すべて「考えてみたら、料理家なんだから当たり前のことでは?」と思えませんか。
逆に(2)の場合だと、淡々と語っているものの、多くの情報が隠れています。特に「1回3点の料理数ながら、いくらでも応用が効くので人気」とあれば、「どんなテーマでも工夫して料理を考案してくれそう」「機転が利きそう」という印象を与えます。「20名だった生徒が2年で100名に増えた」と聞くと、「どうやって増やしたのか?」と聞きたくなるのが人情ですし、その後にインスタグラムのフォロワー数の話を出すことで「SNSを使った人脈作り、話題作りにも長けた人なのでは」と思わせます。
さらに、(1)で「器店や市場を巡るのが好き」とあるのに対し、(2)では「写真教室に通っている」とあるのも興味深い点です。少し意地の悪い考え方をするなら、料理に携わる人が器店や市場巡りが好きなのは、言わば当たり前。(2)の場合は、それらは敢えて話題にせずともスタイリングの例を出していることで十分に伝わりますし、まったく別ジャンルの趣味を語ることで、ビジュアル作りに強い(例えそのレベルまではこの時点で明らかにしなくても)というイメージを伝えています。

基本④ ビジネスシーンでの自己紹介は「営業」だと考える

カジュアルシーンでの自己紹介とビジネスの場でのそれは違う、という話をしてきました。名刺を交換しながら当たり障りのない受け答えをし、「本日はよろしくお願いします」程度の言葉で締めることももちろん不正解ではありませんが、フリーの場合、どんなきっかけから仕事につながるかわかりません。
「料理教室の生徒数を増やしたい」「別の場所でもレッスンを開催してみたい」「料理本を出版したい」「雑誌や広告の現場で料理の仕事をしたい」といった思いがぼんやりとでもあるのなら、今までの自己紹介のやり方を根本から見直してみませんか。

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写真/Unsplash