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料理家におけるマインドフルネス

スキルアップ
2018年11月19日

昨今話題の「マインドフルネス」という言葉、聞いたことはありますか? 好感度の高い人というのは、急に感情的になったり不機嫌を表に出したりするようなことはなく、いつも気持ちが安定しているように見えるもの。でも、仕事をしていく中では、時にはタイトなスケジュールや無理難題に四苦八苦することもあるし、プライベートの嫌な気分を引きずってしまうこともあるでしょう。そんなときはどうすればいいのでしょう? そこで、Googleで開発されたマインドフルネス研修プログラムSIYの日本人女性初の認定講師、木蔵シャフェ君子さんに、話を聞きました。
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「今」に目を向けることで、集中とリラックスが手に入る

木蔵シャフェ君子さん著書
木蔵さんの著書「シリコンバレー式頭と心を整えるレッスン」と「mindfulness diary2019」。マインドフルネスについて詳しく知りたい人には左の本、毎日実践したい人には右の本がおすすめ。
「マインドフルネス」という言葉は聞いたことがあると思いますが、「瞑想のこと?」「スピリチュアルなもの?」などという印象を持つ人もまだまだ多いかもしれません。マインドフルネスとは一体、何なのでしょうか?
「マインドフルネスとは、“今”に集中していて、かつリラックスしている状態を指します。運動選手のピークパフォーマンスの状態も、マインドフルネスが基盤にあるといえるでしょう」
なるほど。確かにそうなれば理想的ですが、どうすればそのような状態になれるのか、すぐには想像ができませんね。
「例えば今の状態が、何か困窮していたり、ネガティブな気持ちに包まれそうな状態であっても、そこにとどまらずに循環を良くしておくということです。起きたことに対して、“考えてはいけない”とか“あんなこともう二度と起こらないようにしなくては”と思い始めると、結局、思考がそこから動かなくなってしまいます。そうではなく、今の瞬間に起こっているシンプルなことに目を向けてみてください。例えば目の前のコーヒーの香り、味、匂い、周囲の音。それらに注意を向けてみると、まったく違う気持ちになるのではないでしょうか」

マインドフルネスを実践するための二つの方法

木蔵シャフェ君子さん
どうすればマインドフルネスの状態に自分を保つことができるのでしょうか。それにはいくつかの方法があるのだそうです。そのやり方を伺いました。

1)心を整えるための「時間」と「場所」を持つ

“瞑想”は効果的ですが、「マインドフルウォーキング」といって歩きながら行うこともできます。大事なのは、ただ何となく行うのではなく、今の自分に意識を向け、集中して行うことです。そのためには「毎朝椅子に座って行う」「通勤の家から駅までの間に行う」など時間と場所を明確に意識することが大切です。朝一番でも、寝る前でも、自分が取り入れやすい時間でいいとのこと。5分でも10分でもいいので毎日続けると、日々の自分の状態の変化を味わうことができるようになってきます。まずは今自分が行っている呼吸に集中するようにしましょう。そこでつい明日のことや昨日のことに思考が流れていっても、“ああ、今私は違う方向に流されているな”ということに気づいたら、また戻ってくればいいのです。

2)自分の今やっていることに集中する

今私はゴミを出している、とか、今コップを手に持ってお茶を飲んでいる、など、自分の今の状態に集中してみてください。料理家であれば、「今私はにんじんを細かく刻んでいる」といったことに集中するのです。日頃いかに、目の前のこと以外のことを考えているかが、よくわかるのだといいます。そして、味わい深い人生というのは、今いる場所に心もしっかりと存在している、ということだと木蔵さんは言います。心が今、目の前にある物事を離れて別の場所に向かいそうになったら、いったん立ち止まって「そこは本当に今、自分の心をもっていくべき場所なのか?」ということを自分に問うてみるのもよいでしょう。

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撮影/山下みどり 取材・文/吉野ユリ子

お話を聞いた人:
木蔵シャフェ君子さん●ぼくら・しゃふぇ・きみこ●一般社団法人「マインドフルリーダーシップインスティテュート(MliLI)」理事。カリフォルニア・サンタクルーズ在住。ICU卒業後ボストン大学MBA取得。P&G、LVMHなどにてブランドマネジメントに携わったのち、独立、渡米し、医療コミュニケーション研修会社経営。その後グーグルで開発されたマインドフルネスプログラムSIYの日本人初の講師に認定され、日本のビジネスにマインドフルネスを広めている。