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受注につながる料理家のウェブサイト

スキルアップ
2019年03月14日
教室やイベントを開催する上では集客の窓口に、出版や企業とのコラボを目指すならポートフォリオとしての役割も果たす個人ウェブサイト。今や、料理家にとって欠かせない武器でもあります。しかし、なかなか着手に踏み切る勇気が持てず、ずっとSNS頼みだったり、最小限のウェブサイトを立ち上げたままほったらかし状態になったりしていませんか? 今回は多くの企業のサイト制作に携わり信頼を得ている、TRACKのアートディレクター、圓島努さんに、最近のウェブサイトの動向について話を伺いました。

レシピは大切な「作品」。テキストとビジュアルで蓄積を


まだ見ぬ人々にも自らの存在を示すことができるウェブサイト。企業や個人事業主にとっては大事な存在と言われていますが、制作には手間もコストもかかることだけに、なかなか開設に至っていない方も多いかもしれません。日々忙しい料理教室主宰者であれば、なおさらです。そこでまず、そもそもウェブサイトを開設する必要性はあるのか、なぜSNSでは不十分なのかを、圓島さんに伺いました。
「例えばインスタグラムはほぼビジュアルだけのコミュニケーションで、しかも写真の見せ方はスクエアに限るという制約があり、Twitterならテキストだけのコミュ二ケーションで文字数に制約があります。根本的に、SNSで伝える情報というのは、基本的には流れていってしまうもの。そのため、すべての情報発信をSNSのみで行うのは、単純に、もったいないなと感じます」。
圓島さんは、料理研究家にとってのウェブサイトの魅力とは、 “アーカイブを蓄積できること”と“ビジュアルと言葉で多くの人に情報発信できること”ではないかと言います。
「毎日教室や雑誌などでさまざまなレシピを提案していると思いますが、それらがその場限りで終わってしまうのはもったいないですよね。ウェブサイトにアーカイブとして写真とレシピを蓄積していけば、いつしかそれは立派な作品集となり、財産に変わるでしょう。“簡単レシピ”“お弁当”“おもてなし料理”など、タグで検索性を持たせれば、ますます価値が高まると思いますし、たまたま料理教室に来た生徒さんや偶然雑誌で見かけた人、といった限られた人だけではない新たな出会いに対し、常にオープンでいられる価値は大きいと思います」

ウェブサイトはブランディングの「軸」になる

またSNSが盛んな時代だからこそ、デジタル上の自分のブランディングを明確にするためにもサイトを持つべき、と圓島さんは言います。
「この料理家さんいいな、この先生どんな人だろう? と思った時に多くの人はグーグル検索をすると思いますが、そこでブログやSNS、取材を受けた際の記事などが上がってきてもそれぞれ断片的な情報だし、各メディア側による表現に加工されてしまって、その人自身の人となりやブランディングが明確になりづらいと思います。そんな時にウェブサイトがあれば、自分が見せたい顔や軸にしたい考え方などに近い形で伝えることができ、ブランディングの起点にできるのではないでしょうか」

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撮影/yOU 取材・文/吉野ユリ子

話を聞いた人
圓島努さん
TRACK アートディレクター/Webディレクター
武蔵野美術大学油学科卒。大学ではコンテンポラリーアートを学ぶ。幅広い企業や商品、サービスの広告・プロモーションを担う企業「TRACK」にて、Webサイトやアプリなどのデザインを中心に、お客様のビジネスやサービス・商品を、エンドユーザーが楽しく・分かりやすく体験できるような「使えるデザイン」を常に心がけている。https://www.track.co.jp