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一眼レフを使った料理写真の撮り方

スキルアップ
2018年07月9日

ホームページやブログ、SNS、そして教室でのレシピ配布用に…と、作った料理を「写真に撮るまで」が仕事と言っても過言ではないほど、今や料理家にとって料理と写真は切っても切れない関係にあります。どんなおいしい料理も、どんなに優れたレシピも、多くの人が最初にあなたの料理と出合うのはまず写真。そしてそれを、プロのフォトグラファーに撮影してもらえるチャンスは限られていますから、自分で上手に撮影できるようにならなくては! でも、ほんの少しコツを覚えるだけで、料理撮影の腕は格段にアップします。
そこで、料理写真家としても人気のフォトグラファー、福田喜一さんが、2回にわたって初心者のための料理撮影のコツを伝授します。後編の今回は、デジタル一眼レフカメラで上手に料理を撮影する方法です。
>>スマホを使うきれいな写真の撮り方をフォトグラファーが伝授!

初めてレンズを買うときのおすすめ

さらにもしレンズを1本買うなら何がオススメか聞いてみました。「レンズを1本買うなら、F値(絞り値)の小さい(明るい)ものがオススメです。とは言えF値が小さいほど高いので、予算とのバランスも必要ですね。通常入門者向けのセットで売っているものはF4やF5.6といったものが中心ですが、これだと思ったほどボケ味を楽しむことができません。F2、F2.8程度のものを購入しておけば一眼レフの醍醐味を楽しめるでしょう。50mm程度のマクロレンズなら、自分の目と対象との距離感をあまり作らずに、自然な視点のまま撮影できると思います」。これからレンズを買う予定の人はこれを参考に!

構図より、まず料理をよく見ること

「写真の初心者向けの入門書などには、まず構図を考えよ、といったことが書かれているかもしれませんが、僕の考えでは構図は後でついてくるものと思っています。まず料理をよく見て、その料理のどこが魅力か、何を伝えたいかを考えましょう。食材の新鮮さなのか、彩の美しさなのか、季節感なのか、食材の組み合わせなのか、盛り付けの面白さなのか。盛り付けの面白さの場合も、高さを出した盛り付けや、ソースで描いたアートが面白い場合もあるでしょう。素早く“何を伝えたいか”を見つけ出すことが何より“構図”を作る重要なポイントだと思います。あまり構図ばかり考えていると大切な料理が冷めたり、冷たい料理が溶けたりしてしまいますから。撮影は時間との勝負です」と福田さん。

撮影の構図に正解はない!

構図には「日の丸構図」「トンネル構図」「三分割構図」などさまざまな公式がありますが、それらを学んだりこだわったりする必要は一切なし、と言います。「写真に正解はありません。料理写真にしても、お皿が全部入っていても、見切れていても、料理のてっぺんが切れていても、それぞれに面白さがあり、美しさがあります。形式にこだわらずにいろいろ試して、自分らしい写真を探して見てください」
一眼レフカメラ

お気に入りの料理本の写真を真似てみる

とは言え、何をどう撮ればいいのか途方に暮れてしまう…という人に福田さんがすすめするのは、好きな料理写真を真似ること。「スマホカメラの回でもお話ししましたが、好きな料理雑誌、海外の料理本などで素敵だなと思うものを真似して撮影してみてください。好き、の理由が、光かもしれないし、スタイリングかもしれないし、寄り加減かもしれないし、構図かもしれない。好きな写真をたくさん集めて、たくさん真似しているうちに、その理由が見えてくると思います」。学ぶことは真似ること。料理の世界でもそう習った人もいるかもしれませんが、写真の世界でもそんな法則があるようです。

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撮影/田上浩一 取材・文/吉野ユリ子

話を聞いた人 福田喜一さん(Kiichi Fukuda)
 
フォトグラファー。東京綜合写真専門学校卒業。写真家・若木信吾に師事後、独立。ポートレイト、風景写真を中心に雑誌やタレント、広告などの分野で活動中。ライフワークとして友人が行っている中国内モンゴル自治区での 砂漠緑化を毎年記録している。また料理写真家としても活躍し、映画「Eatrip」にはメイキングスチール撮影で参画。また野村友里さんの東京食案内本『Tokyo Eatrip』の撮影も行う。